6◆婚約者候補?
orz 中盤飛ばし過ぎて変な短さに…手抜き?…しょんなあ…しかも、だからアクション苦手なんだってば~でもちょい楽しい?…
◆婚約者候補?
── 王太子の侍従として王城勤務することになったデューだったが ──
しかし男装からの女装という、王太子のはた迷惑な提案でドレスを着せられたデューが、王太子から、隣国の貧しい小国のエルフと言う名の姫だと紹介された後、最初の罠が仕掛けられた。
何しろドレスの色が思いっきり、王太子カラーなのだから。
それはむろん、驚かれただけでなく、かなりの嫉妬心と羨望を受けないわけはなかったのだ。しかも、ただこの色が好きだっただけだから購入しただけなのに、とデューが説明しようとすると、
「え? 彼女が勝手に私の色のドレスを着てると不敬ではないかっって? 何をいってるのかなあ? もちろん、大切な彼女の為に私自ら選んで着て貰ってるに、決まっているだろう?」
なんて、王太子殿下自ら爆弾発言投下しちゃうものだから、その結果は言わずともおわかりだろう?
"面白い"
王家主催の庭園でのパーティ会場で、銀龍が語りかけてきた。
(? 人間たちの欲望は、まあ確かに興味深いけどね)
"そういうなよ"
銀龍の声が脳裏に響いた。
"お前もかつては人間だったろう"
(それに、この結界術は何だよ? 人混みに入ると張るようにしているのか? 死体を借りた現身なんだから意味ないだろう)
"まあ、そんなことをいわずに。人混みに入ると自動的に張るようになってしまってね。お前の言う通り、既にこの世のものではないのだから意味はないかもしれないが、面白い物が見れるかもしれないぞ?"
デューが張る結界は、銀龍の加護と古の小国のギフトが融合したものだ。どんな悪意や攻撃も無効化し、時には跳ね返す。【因果応報】の加護により、加害者は自らの行いの報いを瞬時に受ける。
婚約者候補の令嬢たち ―― 特に桃色の髪とピンクの瞳の見た目は愛くるしいフュンフティヒ侯爵令嬢ゼヒツェインと、将軍の息子に横恋慕する緑髪が鮮やかで空色目の儚げに見えるツヴァンティヒ子爵令嬢フィーアーナ ―― が結束し、デューを陥れようとした。
庭園パーティー全体の様子を探る貧乏小国の王女扮するデューに、フィーアーナが侍女を使い、うっかり泥水を彼女に掛けさせようとした瞬間、液体は空中で止まり、Uターンしてフィーアーナ本人のドレスに跳ね返った。
「きゃあっ!?」
「おや?」
デューは無邪気な表情で首を傾げた。
「フィーアーナ様、お足元にお気をつけて~♪」
次にゼヒツェインが誤ってつまずき、手が滑ったふりをしてワインをデューに浴びせようとしたが、同様に自分に跳ね返ってきた。
令嬢たちは青ざめた。これは偶然ではない。何かがおかしい。
「魔女……!」
フィーアーナが呟いた。
デューは微笑んだ。
「魔女ですって? とんでもない。私はただの貧乏小国のエルフと名付けられた小娘なだけですわ、ほほほ」
その様子を料理に夢中になっていた紫髪水色目の15歳のフィルツェイン侯爵令嬢が吃驚して見ていた。
婚約者候補の1人だが、パワーバランスの為に選ばれた中立派の貴族なため、出来レースだと自分の立場を弁えている。両親や兄弟姉妹ともに辺境警備に従事する騎士で、婚約者候補として集まる時は料理だけを楽しみに参加しているようなものだ。
「……これはまた。頼もしい人が候補に加わりましたわね。妖精のような名前に騙されますね」
「なんて素敵なエルフお姉様……私と似たお名前なのが、失礼だろうと親近感湧きますわ……」
先程まで壁の花に徹していた橙髪茶目に人のよさそうな丸眼鏡をかけた13歳になりたてのエルフェン伯爵令嬢は憧れの人を発見したようで、興奮していた。
彼女ももちろん婚約者候補の1人。こちらもパワーバランスの為の貴族派で名ばかりの田舎出身の最底辺家格。両親ともに研究学者で、数合わせの婚約者候補だと自負している。
フィルツェイン嬢も、エルフェン嬢も、お互いの立場を理解し、派閥は違うが意気投合して親友となった。ゼヒツェイン嬢たちの取り巻きたちとそりが合わず、いつでも婚約者候補から外れる覚悟をしているので、ゼヒツェイン嬢たちからも歯牙にもかけられない存在だった。
二人とも、デューがどんな嫌がらせをされても、華麗に避ける姿に心酔したようだ。
後に、この二人が王太子と第二王子の正式な伴侶になるとは、二人は夢にも思わなかっただろう。
*****
それからまた別の日。
次の罠はより陰湿だった。茶会でゼヒツェインが毒入りのジュースを用意し、自分がデューに毒を盛られたと偽装して倒れ、デューは牢屋に連行され……
……が、デューは時間をほんの少しだけ巻き戻す能力を使った。古の力による加護で、ごく短い時間だけ過去を修正するギフトだ。
再び故意の事故が起こる前の同じ茶会の時間に戻ると、ゼヒツェインはわざとらしくジュースをデューの前に置き、席を外した。
ゼヒツェインが戻ってきた時、デューは彼女のジュースを手に取っていた。
「ちょうど喉が渇いていたんです。ありがとうございます」
「待って、それは ――」
ゼヒツェインの顔色が変わった。
デューは一気にジュースを飲み干した。何も起こらない。
「美味しいジュースですね。ただのオレンジジュースのようですけど」
ゼヒツェインは呆然とした。確かに毒を入れたはずなのに。彼女は自分用の安全なジュースと取り違えたのか?
デューはゼヒツェインに歩み寄り、囁くように言った。
「他人を貶めようとするものは、自らも同じ目に合う覚悟があるからこそ行うのでしょうね」
「何を……?」
「私は陥れられるのが許せないんだよね」
デューは指先で軽くゼヒツェインの杯を触れた。目に見えない呪いがかけられた ―― 今後ゼヒツェインが何を飲んでも、毒として作用する呪いだ。
「あなたが私に用意した運命を、そっくりお返ししますね」
公爵令嬢らしい令嬢の権力と財力で牢屋で牢屋番や雇った破落戸たちに乱暴させて、強制的に私刑させるのを知ったから、余程腹に据えかねたらしいデュー。
それに……
通常、契約者以外との契約内容と大きく逸れる人間の世界の理に直接関わることは、誓約上できない。
ただ、いまさら自分が手を下さなくとも、汚い手段まで使って筆頭婚約者候補になったゼヒツェイン侯爵令嬢の記憶から。王太子の婚約者候補になるかもしれないと目された、自分より家格や能力や評判が上の令嬢たちが辞退するように、陥れたり中には自殺までさせるほどの行為をしていた。
このまま婚約者候補として居座り続ければ遠からず、怒りを買った彼らの肉親や友人たち、あるいは例の暗殺者辺りから命を刈り取られると予知で判明したし。自分のおかげで寿命が多少延びるだろうことを、むしろ感謝して欲しいくらいだと。
……ま、契約者以外の飛び込み契約だが、範囲内だな。これで満足かな? 王太子殿下の元侍従の兄を持つ、自殺したお嬢さんの魂よ。貴方が安らかに次の世界へ行けるように伝えとく。神ではないがね……
デューは1人会場から外れた場所で虚空に向かって目を向けると、何かは満足したのか、ゆっくりと空へ消えていった。
デューが去った後、ゼヒツェインが恐怖で震えているのを感じた。彼女はフィーアーナに相談し、より直接的な手段に出ることにした。
*****
三日後、デューは王妃からの伝言という偽の呼び出しを受け、王宮の奥まった客室に誘い込まれた。
1人でのこのこ入ったのは、そういうことをするいわばヤリ部屋と呼ばれる客室で、七人の男たちが待ち構えていた。侯爵位と伯爵位が二人だけいたが名前だけか借金塗れで没落寸前らしい。他は低位貴族の子息たちで、金や高位貴族への伝手や便宜などを餌にこの汚れ仕事を引き受けた者たちだ。
「来た来た、銀髪の小娘」
「貧乏小国の王女だって? ふん、玩具にちょうどいい」
「まず俺からだ。本当にエルフと言う名に相応しい、可愛い顔してるな」
デューはため息をついた。
「本当に、人間ってのは学習しないものだなあ」
最初の真正面の、にやついて下卑た男が掴みかかってきた。デューは10センチのヒールの靴を履いた足を軽く上げ、もう片方の足では男の足の甲を踏みつけ、その反動でかかと落としで男の顔面に叩き込んだ。
「がはっ!?」
鼻骨が砕ける音が響いた。男は後ろに倒れ、意識を失った。
「一つ」
デューは冷静に数えた。
背後から二人が飛びかかってきた。デューは身体を屈め、片手を床につき、体を回転させて両足で回し蹴りを放った。
二人のこめかみに同時にヒールが突き刺さり、彼らは吹き飛んで壁に叩きつけられた。
「二つ、三つ」
奥にいた二人が怯んだが、それでも襲いかかってきた。デューは体を低く構え、二人のすねを狙ってハイヒールを横に払った。
「ぎゃああっ!?」
すねの骨が折れる音が二つ響いた。二人は床に転がり、痛みに悶えた。
「四つ、五つ」
残る二人のうち一人は逃げ出そうとしたが、デューは彼の襟を掴み、壁に押し付けた。
「おやおや、お眠りになるにはまだ早いのではないですか? お坊ちゃん」
デューは楽しそうに笑いながら、左半身にうっすらと銀色の蛇か魚みたいな鱗が透け、そのせいか他の理由で恐怖で震える青年の顔を見つめた。
「それで? 何をしようとしたのか、誰の計画でしたっけ?」
「わ、私は……フィーアーナ様から金をもらって……」
「ああ、ツヴァンティヒ子爵令嬢ね。で?」
「ゼヒツェイン様も関わっていると聞きました……あと、背後に王妃様が……」
「なるほど」
デューはグローブはないし、白い手袋だけでは心許ないので結局平手でぱあんと青年の頬を一撃した。彼は壁に頭を打ち付け、気絶した。
デューは最後に残った怯える令息の顔を見つめた。
最後の一人は跪いて許しを請うた。
「許してください! 私は強制されたんです!」
「嘘つき」
デューは冷たく言った。
「あなたの記憶には、楽しみにしていたという感情がはっきりと刻まれてるけど?」
彼女は小柄な女性とは思えない力で最後の男の首を片手で締め上げて気絶させると、七人全員が倒れた客室を見渡した。
"おいおい。少しやり過ぎでは"
……あ……まあ、不可抗力ってことで、てへっ。王太子殿下と将軍がうまいことやってくれるでしょ……たぶん。
「さて、結果的にはこれで証拠が揃ったからさ」
デューは銀龍の加護を使って、七人の男たちの記憶からこの計画の全容を読み取り、水晶に記録した。フィーアーナとゼヒツェインの関与、そして背後で糸を引く王妃の影が、鮮明に浮かび上がっていた。
*****
悪役令嬢とか悪女っぽい人物出すと楽しいw




