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三題噺もどき3

妹と―に。

作者: 狐彪

三題噺もどき―ごひゃくろくじゅうよん。

 


 今日も、車を運転している。


 空はあいにくの雨模様だ。

 まぁ、そんなに酷くはないし、予報によれば昼過ぎには止むらしいので問題は何もない。なんとなく気分が上がらないくらい、どうってことはない。

「んー……」

「……」

 珍しく助手席に座った妹が唸っているのを横目に、ハンドルを切る。

 何かをスマホで探しているらしいが、何だろう。探し物が通販でも手に入るなら、今すぐ帰ってもいいだろうか。

「……よし、○○に行ってみよう」

「……どこけ」

 どこに行くとも決めずに走り出したので、適当に曲がってしまった。

 妹の言う場所が、私の頭の中にある場所であっているなら、曲がったのは間違いだ。

 まぁ、どうにかしていくことは出来るんだけど、ちょっとした遠回りになるぐらいだ。

「その前にご飯食べよう、お腹空いた」

「……どこで?」

 確かに空腹ではあるが、曲がった先にある店は限られている。

 それ以外の場所がいいなら行くけれど、できればこの道にある中で探してほしい。

 住み慣れた町なんだから、この道の先に何個飲食店があるかは分かるはずだ。

「――は?」

「あぁいんじゃない」

 正直私はどこでもいい。食に対するこだわりはないし、食べたいと思うものがあまりない。外食だと特にそうなる。行った店で食べられるものを食べる、という感じなので。大抵そんなもんじゃないんだろうか……。よく母には文句を言われるけど。なんでもいいが一番困るって。そうは言ってもなぁ、ここに行きたいと言って断るのはそっちだろうに。断ってきたのはそっちだろうに。断られるの分かってて答えられる人間ではない、私は。

「……」

 妹の言った店は、道の先にある、数年前にできたカフェである。看板はすでに見えていたりする。だから言ったのか……?カフェというか、喫茶店という方がいいのかな、雰囲気的には。この二つの違いがあまり分からないんだけど。

(多分)全国展開している、チェーンの喫茶店だ。よく逆写真詐欺とか言われているのを耳にする。個人的にはモーニングに行くのが好きかなあそこは。小倉が美味しい。あと食パン。

「……」

 五分ほどで目的地に到着し、車を停める。

 あまり広い駐車場ではないので慎重に止める場所を選ぶ。昼時間前というのもあってか、割といっぱいだった。かろうじて「軽」と書かれた場所が開いていたのでそこにとめる。

「――っしょ……はい」

 パーキングにいれ、エンジンを切り、マスクをつける。

 鞄は1つしか持っていないので、昨日と同じもの。中身も一緒。財布と携帯と必要最低限のモノだけ。

 唯一昨日と違うのは、右手に揺れるブレスレットだけ。

「……」

 昨日結局、妹は新しいピアスを、私は買う予定はなかったが値段もそこまで張らない気に入ったブレスレットがあったので購入したのだ。

 チェーンタイプのモノで、緩めにつけているので腕を動かすたびに滑る。嵌めるだけみたいなやつの方が好みではあったが、外れる可能性大だったのでやめた。手首細いから外れるし失くすよ絶対と妹に言われたのだ。

「……」

 その妹は新しいピアスを見つけたと思ったら、今日はブーツを探しているらしい。

 ショートブーツが欲しいと言っていたが……持っていたと思うのは気のせいだろか。去年も、それこそ丁度同じくらいの時期に探していた記憶がある。

 自分自身があまり靴とか買わないから分かんないんだけど、そんなものなんだろうか。最低二足あれば十分じゃないか?

「違うタイプのが欲しいんだよ!」

 とは妹談。なんだ違うタイプって。よくわかんないな。

「いらっしゃいませー何名様ですか?」

 店のドアを開くと、すぐに声がかけられた。まだ名前を書いて待つほどでもないらしい。これから少し経てば並ぶようになってくるんだろう。それとも人数の問題かな。

「2人です」

「奥の席どうぞ~」

 しかし、見れば店内はすでにほとんどの席が埋まっていた。

 そこまで広い店内でもないから仕方ないんだろうけど……結構人が居るなぁ。

 先を歩く妹の後ろを歩きながら、軽く見渡してみる。ホントにいろんな人が居るよなぁ。パソコンとにらめっこをしているスーツの人やら、楽し気に会話をしているご婦人やら、家族連れやら、カップルやら。

 楽しいのはいいが……もう少し声は落とした方がいいと思う。会話の内容が聞こえてきて仕方ない。聞かせているのならまだしも、そういう内緒話染みたものはもう少し小声で話すものだと思うぞ、ご婦人方。

「お決まりになりましたらボタンでお呼びください」

 案内された、すみっこの席に2人で向かい合って座り、メニューを開く。

「何食べる~?」

「ん~」

 相当空腹だったのか、気分のよさそうな妹の声に適当に答え、妹がめくるメニューを見ながら考える。

 ……ピザパンとか結構好きなんだけど、あれ食べづらいんだよなぁ。切ってはもらえるけどうまく食べられたためしがない。小倉トーストもいいけど、今はあまり甘いものの気分でもないし。サンドウィッチ、ハンバーガー……。

「なににしよ」

「たまには違うのたべたら?」

 そんなことを言う妹の声を無視して。

 結局、いつも食べているものにした。









 お題:すみっこ・ブーツ・右手

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