入学式前に
「なんか後ろにも人いな~い?ひひ~。」
偏美と呼ばれる人間が僕を狙ってくる。勿論、なすすべなく大ピンチ。これじゃあ、蛇に睨まれた蛙じゃないか。
「はいはい。そこまで。あなた達。うるさい。」
教室の奥から女子の声が聞こえる。
「とりあえず。そこの二人。教室に入ってきたら。どう。」
なんか、風紀委員だとか学級委員ヘビーユーザーみたいな話し方。まあ、この場をなんとか乗り切れそうな気がした。言われたとおりに教室に入った。黒板に磁石でとめてある座席表を見て自分の席を知ると共に自分の席に座る。まあ、悔しいような気がするが、ギリギリ窓側を保守できたということは称賛するべきだが、ドア近くになってしまったのはまさに「不覚」。さらに、張川の席からは遠い。とりあえずすることがないので、机に肘をつき、ぼーっと周りを見渡す。すると、一人近寄ってきて、
「あっ、同じクラスじゃん!今年もよろしくね!」
と、一言。コイツは去年同じクラスだった御花だ。江戸時代にこの地を統治した一族の末裔なのだとか。なので、彼女の動作というか気品というか風格というか。全てからお嬢様感が伝わってくる(プライベートを除いて)。ちなみに、小学校は違ったわけだが、隣の小学校にお嬢様がいるという話はよく聞いた程有名(本人はやめてほしいと言っているが)なのだ。
「あー久しぶり。そんな言葉づかいでいいんか?お嬢様だろお前。」
「言ったくせにお嬢様にお前とは失礼な。だって、『彼』がいるのにお嬢様しなくていいでしょ。この学園なら『彼』が一番身分が高いでしょ。」
「この国の憲法だと、身分は平等なはずだけど……『彼』って誰だ?」
「錬知君。この学園の園長?校長?のお孫さんだよ。」
「派錬知学園が錬知氏によって創立されたのは知ってるけど……その言い方だとうちのクラスにいるの?」
「そちらにいらっしゃるわ。」
さすがに指をさすのが失礼ということが急変した言葉遣いから伝わってくる。彼女の視線の先をたどると、「偏美」と呼ばれる女の後ろに身分が違うことがすぐ見てわかるような綺麗な姿勢をしている男がいた。
「ドスーン」
「!?」
「!?」
急に、大きな音。俺と御花は目を丸め、一瞬、見つめあう。その後、廊下側の窓から廊下の窓を見ると、煙がもくもくと立ち昇っていた。
ギャーーーーー!!!、とクソギャル(偏美)が。錬知さん?様?は立ち、口を大きく開けたままふさがらない。
——多分、この3年間は平和じゃないね。