第9話、本当の優しさ
異世界での朝、、、
今日も筑矢が朝起きるといつものように摘希がそこにまた立っている。
摘希「おはよう。何か顔色悪いぞ?」
筑矢「おはよう。いやちょっとな。。。」
摘希「私で良ければ話を聞こうか?」
筑矢「話せば長くなるからまた今度でいい。。。」
摘希「遠慮せずに何でも話していいんだぞ?」
筑矢「なあ摘希俺ってめんどくさいやつなんかな?」
摘希「急にどうしたんだ?」
筑矢「いや昨日良かれと思って言ったことが相手を刺激させるだけだったなと思える事があったんだ。」
摘希「自分の意見が人と合わないことなんてよくあることだな。」
筑矢「でもさ余計なこと言わないほうが良いこともあるのかなって考えてた。」
摘希「私は相手のために時には厳しいことを言うことも大事だと思うぞ。」
筑矢「相手のためってなんなんだろうね。結局押し付けてるだけなら意味がないような気もしてきた。」
摘希「おい、とりあえず外の空気でも吸って話そう。」
そして以前にも行った公園に着いた。
摘希「さて話そうか。」
筑矢「摘希は死にたいと思ったことあるか?」
摘希「私は最近毎日のようにそう思うぞ。ずっと身体も動かないし病院から出れないし。」
筑矢「生きる意味とか考えたりする?」
摘希「人生に意味があるんだとしても最後に死ぬのは同じだし私はそういったことは考えないな。」
筑矢「俺今さ元の世界で仕事もできてないんだ。精神疾患で休んでるんだ。俺には何の価値があるのかな。」
摘希「そうか。私も似たようなもので社会から離れてるぞ。それでも生きなきゃならんのだろうなと思っている。」
筑矢「何か急にごめんな。」
摘希「気にするな。深呼吸でもしろ。」
筑矢は元々は明るい性格であり小学校までは友達も多く学校では人気者であった。しかし中学に上がる頃には性格が大きく変わり口数が少なくなっていった。思春期に入ってから死にたいと考えることが多くなっていた。
中学校3年の3学期を迎え始めたある日のこと、筑矢の母が車で買い物に行ったきり帰りが遅く心配し始めたその時母が交通事故に遭ったと連絡があった。母もまたうつ病であり自分の死を願っていたが皮肉にも事故で亡くなった。
以前にもまして筑矢は高校に上がるとより塞ぎ込むようになり人と関わることをより避けるようになっていった。新しい友達もなかなかできず同じ中学だった友達といつも話してばかりの高校生活だった。
社会人になってからはコミュニケーション能力の低さが目立ち社会になかなか適合できずにいた筑矢だったが、仕事には真面目にサボらず取り組んでいた。だが要領が悪く手を抜くことを知らなかったため働いているうちに心が蝕まれていった。筑矢は病気になってこの社会や世界そのものを憎むようになった。
それでも自分が病気になったことを何かのせいにするのは簡単なことであったし、何かのせいにしてもそんな自分に嫌気がさすだけであった。こうして考えを巡らせているうちにどんどん筑矢は苦しんでいった。
その後この異世界に来て摘希や町の人々との出会いによって筑矢は大きく変わっていった。これまでの自分の経験や人生を受け止め前に進もうとしていた。自分や自分の周りの人間が幸せになるような世界を心から望むようになっていたのだった。
筑矢「俺のこういう考えってきっと傲慢だったんだろうな。だけど俺みたいに後悔する人が増えてほしくなかったんだよ。」
摘希「筑矢は優しいんだな。これまで憎んでた世界を優しい世界に変えたいと願うようになってる。なかなかできることじゃないさ。」
筑矢「ありがとう。やっぱ摘希に話して良かった。救われたよ。」
摘希「私は筑矢のようなやつと仲間になれてとても誇りに思うぞ。」
筑矢「摘希がいてくれて本当に良かった。」
摘希「筑矢は深く考えすぎだな。間違えたっていいじゃないか。自分がいつも正しいと思ってるやつより間違えを認めることができる人間のほうが私は好きだぞ。」
筑矢「間違えない人間なんていないもんな。」
摘希「これからは私には言いたいことは素直に口にすると約束しろ。」
筑矢「分かった。」
摘希「それと怒らせたお友達か?仲直りできるといいな。」
筑矢「ああ。そうだな。長々付き合わせてすまなかった。」
摘希「筑矢これだけは言っておくぞ。私には遠慮するな。」
筑矢「摘希もな。」
摘希「なあ筑矢お前に見せたいものがある。」
筑矢「何だよ急に。」
摘希「まだ明るいから夜になったらな。」
そのままたわいもない話をしているとあっという間に夜になった、、、
摘希に連れられ町の外れの高台へ連れて来られた。
摘希「筑矢ここに寝そべってみろ。」
そう言うと摘希が草むらに寝転がったので筑矢も同じように寝転がった。
筑矢「星が綺麗だな。。。」
摘希「筑矢世界は残酷かもしれない。どんな悲しいことがあっても時は進み続ける。でも世界はこんなにも美しいんだ。だからきっと悪いことばかりじゃないさ。」
筑矢「摘希俺もっとまともな人間になりたい。」
摘希「それは立派なことだ。でもどんな筑矢でも私は受け止める。」
筑矢「まったく嬉しいこと言いやがって。」
摘希「それじゃあそろそろ帰ろうか。」
筑矢「ああそうだな。」
つづく