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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
第四章:平和と反乱

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056 船の所有権

 海の投網漁は過去最高の収益をもたらしてくれた。


 魚群一つで約100万ポイント。

 底引き網漁の倍だ。


 ただし底引き網漁と違って日に1個の魚群を潰すので精一杯。

 料理による強化効果(バフ)があってもクタクタになるほどの過酷さだった。

 川の投網ですら大変だったが、その比ではなかった。


「今後は底引き網漁で稼ぎつつ投網漁で軽くブーストする形になりそうだな」


 この意見に全員が賛成した。


「十分稼いだし、少し早いが今日は戻るとしよう」


 腹が減った、とお腹をさする俺。


「漁で稼ぐなら一日仕事になるし、今後はお昼を抜くことになるっすかね?」


「適当に買って船の上で食えばいいんじゃないか。拠点に戻るのは一苦労だし」


「コクーンで食べ物が買えたっすね! すっかり忘れていたっすよ!」


 海の欠点を挙げるとすればメシだ。

 皆で集まって昼ご飯を食べることができなくなる。


「私でよろしければお弁当をお作りいたしますよ」と美咲。


「「なら弁当で!」」


 俺と燈花は口を揃えて言った。


 ◇


 船が島に向かっている間、各々で好きなように過ごしていた。

 といっても、俺も含めて全員がスマホを弄っている。


 俺以外のスマホからは音が漏れていた。

 動画を観ているようだ。


 俺はXに要望を出していた。

 船をギルドの所有物にしたい、と。


 現状だと船を扱えるのは俺だけで、これは何かと不便だ。

 俺が死ねば船も消えるし、体調が悪い時は海に出られない。

 ギルドの所有物になればそういった問題が解決する。


 対するXの反応は――特に無し。うんともすんとも言わない。

 ゼネラル徘徊者の討伐報酬でゴネた時は光の速さで対応したのに。

 今回が普通であって前回が異常だったのだろう。


 待っていても仕方ないので〈履歴〉を開く。

 ログを遡ると、案の定、ペットボトルトラップが無断で使われていた。

 今回も栗原たちの仕業だ。


『昨日注意しただろ、俺達のペットボトルを勝手に使うな』


 グループチャットで抗議する。

 栗原は適当に流し、五十嵐が「持ちつ持たれつ」とカバー。

 まるで昨日の再現だ。


 だが、昨日と違って今日は食い下がる。

 人を殺そうとしておいて都合のいいことを言うな、と。

 俺達のポイントを返せ、とも。


「風斗、珍しく怒ってるじゃん」


 麻衣が驚いたように顔を上げた。

 他の女性陣もこちらに目を向ける。


「そんな風に見えるだろ?」


 ふふふ、と笑う俺。


「どう見ても怒っているっすよ!」と燈花。


「そこまで怒らなくてもいいんじゃない? 海で楽に荒稼ぎできるんだし。そりゃあ、私らがシコシコ作ったペットボトルトラップを勝手に使われるのはむかつくけどさ」


 麻衣の意見に女性陣が頷く。


「分かっていないな」


「分かっていないって? どういうこと?」


「海で荒稼ぎできるからこそ怒っておく必要があるんだ」


「えっ」


「ペットボトルトラップを奪われてお金に困っている風に振る舞っておけば、奴等は俺達が海で楽に稼いでいるとは思わないだろ?」


「まぁね」


「むしろ『ざまぁみろ』とほくそ笑む可能性すらある」


「ありえる! 風斗を殺そうとしたくらいだし」


「そうやって油断させておいて、その隙に俺達はドカッと稼ぐわけだ。平和ウィークが終わった頃には資金力の差はやばいことになっているだろう。数百万、いや、それ以上の開きがあってもおかしくない」


「凄ッ! 最後に笑うのは私らじゃん!」


「そういうこった」


 沿岸漁業の稼ぎは俺の想像を超えていた。

 このことが知られたら大量の模倣者が出るだろう。

 そうなれば今のように効率よく魚群を潰すのは難しくなる。


「自慢したいかもしれないが、海の漁は俺達だけの秘密にしよう」


「もち!」


 とはいえ、いずれはバレるだろう。

 完全に隠し通すというのはどうやっても不可能だ。

 だから、それまでの間に稼げるだけ稼いでおくとしよう。


「おっ?」


 ピロロンッとスマホが鳴った。

 確認するまでもなくXからのお知らせだと分かる。

 女性陣のスマホも同時に鳴ったからだ。


=======================================

【仕様変更のお知らせ】

 船の所有権を「個人」から「ギルド」へ変更できるようにしました。

=======================================


 俺の要望が通ったようだ。


「これで俺が体調不良に陥っても底引き網漁をできる」


「この島で体調不良とかありえないっしょ! 薬があるんだし!」


 麻衣は強壮剤を召喚して飲むか尋ねてきた。

 俺が断ると、彼女は迷うことなく自分で飲んだ。


「くぅ! 元気が漲ってきたぁ!」


「いっすねー! 私も飲もうっと!」


 燈花も躊躇なく強壮剤を飲んだ。


「二人は恐れ知らずだな」


「そんなことないっすよー。風斗はビビり過ぎ! 副作用とかないっすよ?」


「怖いのは副作用より依存症だ」


「あー、たしかに。効果が凄いから油断すると依存しかねないっすね」


「じゃあ私やばいじゃん! 既に依存症みたいなもんだよ! 今日だって生理のだるさを吹き飛ばすのに飲んだし! さっきノリで飲んだのも含めると一日で二回も手を出しちゃったよ! ていうかノリで飲むとかやばいな私!」


「いや生理なら強壮剤なんかに頼らず休めよ! それと俺に向かって恥じらいもなく生理って言うのはどうなんだ。これでも男なんだが?」


「別にいーじゃん! 他に男子がいるわけでもないんだしさぁ! それよりさ、コクーンの薬って本当にすごいよ! 生理のダルさや痛さが一瞬で消えるんだもん!」


 鼻息を荒くして捲し立てる麻衣。

 いつの間にか話題が「体調不良」から「生理」に変わっていた。


「本当にそれほどの効果があるのですか、麻衣さん」


 食いついたのは美咲だ。

 由香里と燈花も興味を示している。


「本当! 美咲も試したら? いいよー! 本当にいい! 日本でも売って欲しいよ! あったら絶対にノーベル賞もんだよ! オスカーだっていける!」


 オスカーは映画だろ。

 と思ったが、話の脱線具合が酷いので黙っておいた。


(ほんと島からの脱出以外には柔軟に対応しやがるのな、Xの奴)


 船の隅に移動し、スマホを操作する。

 忘れる前に船の所有権をギルドに移しておいた。


(Xは俺達をこの島に閉じ込めて何をしたいんだ)


 暇なので考えてみる。

 ――が、相変わらず答えは謎のままだった。


 俺達を使って何かの実験をしているのは間違いない。

 だが、その何かがなんなのかは全く分からない。

 相手の目的が分かれば大きな前進になるというのに。


 暇つぶしに〈要望〉で尋ねてみた。

 俺達をこの島に閉じ込める目的を教えてくれ、と。

 驚くことに送信できたが、思った通り返答はなかった。


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