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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
最終章:英雄

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200/201

200 全ての終わり

「漆田風斗、貴様、何をした!?」


 血走った目で睨んでくるクロード。

 俺は「そんなことも分からないのか?」と嘲笑した。


「お前の不死身チートをオフにしたんだよ」


「なんだと!? いつそんなことが……ハッ! そうか、船から打って出て俺と戦っている時に!」


「ようやく気づいたか。俺の作戦は二段構えだった。一つは俺たちがここでお前を足止めし、その間に手島さんがバルゴリウムを生成し持ち帰ること。それが成功すればゲートを生成して島を脱出していた」


「もう一つがアリィを使っての設定変更か!」


「そういうことだ。愛理のポータルに気づいたお前は、俺たちを無視して手島さんのほうに行くに違いない。だから俺は、愛理にポータルを生成すると同時に換装体の接続を解除し、お前の設定を変更するよう頼んでおいたのだ」


「つまり手島祐治は第一計画の本命であり、第二計画を成就させるための足止めも兼ねていたということか……! そこまで考えていたとは……!」


 ここで愛理が前に出た。


「たしかに漆田風斗の計画は凄かった。でも、この計画が成功した一番の要因は他にある」


「なん……だと……?」


「一番の要因はあなたが不正行為に手を染めたこと。以前のあなたなら、こういう事態にならないよう端末の傍にベインを常駐させていた。彼がいれば私は何もできなかった」


「…………!」


「でも、ベインがいると今のような度の過ぎた不正は行えない。ベインが上層部に告発する恐れがあるから。だからあなたは、第二フェーズの開始と同時にベインを外した」


「ぬぬぅ……!」


 何も言い返せないクロード。

 ――かと思いきや。


「違う! この敗北は反対派のスパイ――つまりアリィ、貴様の妨害によるものだ! したがって無効だ! こんなものは! 断じて認められない! 上にも報告させてもらう! そうすれば第二フェーズは成功として扱われ、速やかな侵攻作戦が始まるだろう! 結局のところお前のしたことは裏目に出たのだ!」


 開き直ってきた。

 他の敵と違い、頭だけになってもよく喋る男だ。


「ならそうすればいい」


「なに……?」


「私はただあなたが不正に変更した設定を元に戻しただけ。今回の戦いにおいて、妨害工作になるようなことは何もしていない」


「俺ら地球人には分からないけど、愛理が不正をする気なら銃弾を防ぐ見えない壁だって消していたはずだ」


「漆田風斗の言う通り。そして私が不正に手を染めていないことは監査が入れば判明する。反対派がどれだけ監査を要求しても却下されるけど、あなたが訴えてくれたら上も喜んで調べてくれる。だから私としては今すぐにでも上に報告してほしいところ」


「クソ! クソがぁああ! ここまできて……! おのれェェェェェ!」


 そう叫びながら、クロードは姿を消した。


 ◇


 クロードが消えた瞬間、俺たちは日本に帰還……とはならなかった。

 愛理に言われ、しばらく船内のレストランフロアで待機することに。


「風斗君、戦いはどうなりましたか?」


 美咲がやってきた。

 雰囲気は元に戻っているが息は酒臭い。


「勝ったよ。今は愛理が戻るのを待っているところだ」


 愛理は俺たちのすぐ傍に座り、目を瞑ったまま動かない。

 換装体の接続を解除し、本体のほうで処理を進めている最中だ。


「そうでしたか。すると、私たちは日本に帰れるわけですね」


「うむ」


 話していると、愛理の目が開いた。


「遅くなってごめん。全て終わったよ」


「終わったとは?」と手島。


「クロードの不正は全て暴かれ、彼は失脚し、収監された。それによって計画の見直しが行われ、地球は対象から外れた」


「早いな。まだ戦いから2時間も経っていないのにそこまで進むのか」


「いや、それ自体はもっと前……あなたたちの感覚だと数分で終わっていた」


「ますます早くなっているじゃねぇか!」とビックリする俺。


「私たち異世界人は本来、文字通り光の速さで行動するの。例えば会話だと、1秒で1000万文字程度のやり取りができる」


「1秒で1000万!? すごすぎですかな!? すごすぎですよ!」


 琴子が「ひえー!」と両手を上げる。


「ならこれほど時間がかかった理由は?」


 俺が尋ねると、愛理は液晶テレビを召喚した。

 島ではお馴染みだったコンセントのない模型のような代物だ。


「説明するより映像を観るほうが早いと思う」


 愛理がテレビをつけると、緊急の生放送が行われていた。


『ご覧下さい! 全ての建物が震災前の状態に戻っています! 信じられますか!? ここはつい先ほどまで瓦礫の山だったのです! それが突然! 元通りになりました!』


 そこに映っていたのは、高層ビルの建ち並ぶ東京の街並みだ。


「復興作業をしていたのか」


 愛理はコクリと頷いた。


「元々はクロードの不正が原因だったから。他にも色々と埋め合わせをしていて、それらが全て済むまでにこれだけの時間を要した」


「私の要望はどうなったっすか!? タロウも一緒に帰れるようになったっすか!?」


 燈花がテーブルに身を乗り出して尋ねる。


「その点も大丈夫。調整した」


「よかったっす! タロウ、これで今後も一緒に過ごせるっすよー! コロクとジロウも一緒っすよー!」


 タロウは嬉しそうに「ブゥ」と鳴いた。

 コロクとジロウも上機嫌だ。


「でも、日本でどうやって飼育するの? コロクはオコジョだから大丈夫だろうけど、サイやゴリラを個人で飼うのは難しいんじゃないかしら? 法的な問題なんかもありそう」


 彩音が現実的な質問をする。


「それは……」


 燈花の顔が途端に曇った。


「その点は我が手島重工が協力しよう」


 手島が笑みを浮かべる。


「本当っすか!?」


「ああ。ただし、我々の研究に協力してもらうのが条件になるが」


「研究?」


「主に血液検査を想定しているが、具体的なことはまだ何とも言えない。糞尿の採取なども行う可能性がある。なんにせよ、動物が悲しむような想いはさせないと約束しよう。また、君に不安を感じさせないよう、ライブカメラを設置して常に状況を観られるようにしてもいい」


「おおー! それなら問題ないっす! ありがとうっす!」


「漆田風斗、追加の要望があったら今すぐ教えて。事前に伺っていたのはペットの件だけだったけど、他にもあるなら可能な限り対応させてもらう。それが、あなたたちに迷惑をかけたせめてもの罪滅ぼしだから」


「んー……」


 俺は何かないか考えた。

 すると、俺ではなく麻衣が尋ねた。


「私たちの帰還が始まるまでの猶予ってどのくらいある?」


「ここでのやり取りが終わり次第、あなたたちは日本に転移する。それについては申し訳ないけど変更できない」


「ならこの疑似日本で日本一周の旅をするとか無理かー!」


「そんなことしたい?」と笑う彩音。


「したいっしょ! だってさ、どの家も細部まで徹底的に再現されているんでしょ? なら芸能人の家とか行ってみたいじゃん! どんな内装をしているのかなーって!」


「あー、そういう楽しみ方もあるわけね。参考になった」


 麻衣は得意げに「ふふん」と笑った。


 二人のやり取りが終わるのを見計らい、俺は愛理に言う。


「要望じゃないんだけど、一ついいか?」


「なに?」


「機会があればまた愛理と話したい。たとえ水島愛理という存在が換装体であったとしても、俺たちにとっては一緒に生き抜いた仲間であることに変わりない」


 皆が頷く。


「ありがとう」


 愛理は笑みを浮かべると、立ち上がり、俺に近づいてきた。


「立って、漆田風斗」


「ん?」


 言われた通りに立ち上がると――。


「んっ……」


 ――突如、愛理がキスしてきた。

 背伸びしながら、両腕を俺の首に絡め、唇を重ねる。

 さらには舌を絡めてきた。


「愛理、何を……!?」


「これで私もキスしたし、正式な仲間だね」


「キスが仲間の条件だったんすか!?」と燈花。


「そんなことはないけど……」


「でも、漆田風斗は皆とキスしていた。私だけ仲間はずれは嫌だから」


「ちょ! 皆とキスってどういうこと!?」


 麻衣がテーブルをバンッと叩く。


「大丈夫っすよ麻衣! 私たちはともかく彩音はしていないっす!」


「何も大丈夫じゃないし! ていうか燈花、あんたも抜け駆けしていたの!?」


「申し訳ないけど、私も漆田君とはイチャイチャさせてもらったわよ。それも一度だけじゃなくて何度もね」


 彩音が手を口に当ててクスリと笑う。

 これには里奈以外の女性陣が「はぁ!?」と驚いた。


「彩音、いつの間に風斗と……」


 由香里がギロリと睨む。


「さぁ? いつだったかしら。キスもしたし、他にも色々としたよね」


 こちらに向かってウインクする彩音。

 俺は顔を逸らし、由香里は頬を膨らませた。

 誰も気づいていないが美咲の顔付きも怖くなっている。


「ちょっと待ったー! 私はキスしていないよ! 仲間外れじゃん!」


 そう言って立ち上がったのは里奈だ。


「お、おい、お前には俺がいるだろ……」


 武藤が手で顔を覆いながら恥ずかしそうに言う。


「そうだった! ごめん漆田君! キミとはキスできない!」


「いや、しないから!」


 皆が声を上げて笑う。

 武藤はため息をつくと、手島に言った。


「祐治、まさかお前が脇役になるとはな」


「ふっ、そういう時もある」


 その後も少しだけ雑談をすると――。


「漆田風斗、本当に要望は何もなくていいの?」


「ああ、かまわないよ。日常を取り戻せたらそれでいい」


「分かった。じゃあ、またね」


「おう! またな!」


 愛理の姿が消える。

 何も無かったかのように、忽然と。


 次の瞬間、俺たちの視界が変わった――。


お読みいただきありがとうございます。


本作をお楽しみいただけている方は、

下の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』にして

応援してもらえないでしょうか。


多くの方に作品を読んでいただけることが

更新を続けるモチベーションに繋がっていますので、

協力してもらえると大変助かります。


長々と恐縮ですが、

引き続き何卒よろしくお願いいたします。

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