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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
最終章:英雄

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179 異変①

 異変に気づいたのは、青梅市が近づいてきた時のことだ。

 ダッシュボードの真ん中に固定してある愛理のスマホを見て気づいた。


「ん? 敵がいないぞ?」


 〈地図〉に敵を示す点が表示されていない。


「わざわざ奥多摩まで避難せずともこの辺りで問題なかったのですね」


 美咲は気にしていない様子。

 愛理と毒嶋ものんびり過ごしている。


「そうだなぁ」


 などと言いつつ、俺は違和感を抱いていた。

 都心部に比べて田舎とはいえ、青梅市はそれなりに栄えている。


「まだ田舎だからじゃないか? もっと東に行けば敵も出てくるさ」


 毒嶋が言った。

 窮屈な席でふんぞり返っている。


「だといいけどな」


 愛理が発動している〈索敵Lv.3〉の範囲は周囲10キロメートル。

 言い換えると、スマホを起点として半径10キロメートルが索敵範囲になる。


 10キロはかなりの距離だ。

 青梅市のお隣にある羽村市の一部までカバーしている。


(さすがに敵の1体くらいいるはずだが……)


 そんなことを思っている間にも、車はどんどんと東へ。

 いよいよ東青梅駅までやってきた。


 この辺りになると完全にアスファルトの街だ。

 遠目にも緑は見えず、地方都市のような姿をしている。


「漆田、敵はまだいないのか?」


「ああ、〈地図〉には何も表示されていない」


「マジで? バグってんじゃないのか?」


 毒嶋もおかしいと思い始めたようだ。


「風斗君、どうしましょう」


 美咲が車の速度を落とす。


「まだ余裕があるから、もう少し東に向かうか」


「分かりました」


 車の速度が再び上がっていく。


「漆田風斗、私のスマートフォンを貸して」


 俺はダッシュボードのスマホを愛理に渡した。


「本当だ。敵が見当たらない」


 愛理はスマホを凝視しながら言った。


「スキルの効果が切れたのか?」と毒嶋。


「それはないだろ。〈索敵〉や〈強化〉は日が変わるまで続くはず」


 愛理が「その通り」と頷き、スマホを俺に戻す。


「だったらどうして敵がいないんだ? 〈地図〉に表示されていないだけじゃなくて、存在そのものが消えちまったのか?」


「ルーシーがいれば……って、パンサーも探知できるんだっけ?」


 俺の言葉に、毒嶋がハッとした。


「そうだ! パンサーも探知タイプだった! パンサー、近くにいる敵を教えてくれ!」


 毒嶋が命令すると、パンサーは伏せていた体を起こした。

 車内でキョロキョロしながら、犬みたいに鼻をクンクンしている。

 そして――。


「ガルゥ」


 パンサーは首を横に振った。

 その仕草を見れば何が言いたいのか分かる。

 近くには1体の敵すらいないのだ。


「まずいって! このままじゃパンサーのエサ代が払えないぞ!」


 喚く毒嶋。

 誰が見ても分かるほどに焦っていた。


「トラックで奥多摩に向かっている時はどうだったのですか?」


 美咲が尋ねる。

 俺に対しての質問だと思ったが愛理が答えた。


「少しだけいた」


「じゃあ、私たちが移動している間に消えたということですか」


「そうなる。でも変。近くには私たち以外に誰もいないのに」


 愛理は徘徊者の仲間を呼ぶ習性について言っているのだろう。

 近くに他の生存者がいれば、そいつを追いかけて消えた可能性がある。

 しかし彼女の言う通り、この辺には他の生存者がいなかった。


「美咲、もうちょっとスピードを上げてもらえるか? 可能な限り都心部に近づいておきたい」


「分かりました!」


 SUVがグーンと加速する。

 車内が無言に包まれる中、ついに――。


「風斗君、杉並区に入りました……」


 武蔵野市を越えて杉並区に到達。

 東京23区入りだ。


「漆田! 敵は!?」


「それが……」


 ダッシュボードに固定された愛理のスマホを見る。


「いないようだ」


「はぁ!? マジかよ! そんなのおかしいだろ!」


 毒嶋が座席を手で叩く。

 彼の気持ちを察したのか、パンサーが勝手に索敵を開始。

 鼻をクンクンさせて車内をキョロキョロ。

 しかし、再び伏せてしまった。


「風斗君、これ以上は……」


「そうだな、今日はここらが潮時だろう」


「潮時って……。おい! もしかして引き返すのか!?」


 声を荒げる毒嶋。目が血走っている。


「残念だがそういうことだ。奥多摩まで2時間ほどかかる。今は16時だし、到着した頃には夕方になっている。視界が悪い中で動き回るのは危険だ」


「じゃあエサ代はどうするんだ!? パンサーのエサ代!」


「明日の朝に出直そう。メシを食ったら朝一で都心部に向かう。昼の12時までに稼げば大丈夫なんだから慌てることじゃない。それに、明日の朝になれば敵が増えている可能性だってある」


 これは自分に言い聞かせるセリフでもあった。


「そ、そうか。分かった。にしても、余裕がないと不安になるな……」


 俺は「同感だ」と返し、大きく息を吐いた。


「敵がいないのって、私たちがゼネラルを倒したからなのでしょうか?」


「それはないだろう。倒してすぐの時は普通にうじゃうじゃいた。もっと言えば倒してから2時間はいた」


「ならどうしていなくなったのでしょうか」


「分からん……」


 とにかく明日になったら改善されるよう祈るだけだ。

 そうならなければ、毒嶋はパンサーを失う。

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