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【書籍化・コミカライズ】成り上がり英雄の無人島奇譚 ~スキルアップと万能アプリで美少女たちと快適サバイバル~  作者: 絢乃
最終章:英雄

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174/201

174 イベント4日目

 どうにか逃げおおせた俺たちは、東京湾に停泊しているクルーズ船で夜を明かした。

 クルーズ船という言葉から連想されやすい大型の豪華客船ではなく、かつて島で使っていた船に似た規模感の中型船だ。

 グループチャットで「茨城の港にクルーズ船がある」との情報を受け、「ならば東京港にも……」と来たがビンゴだった。


 船は動かせそうだが、操縦方法が分からないので触っていない。

 島にあった自動運転オプションがないので、下手な操縦は命取りになる。


「「「いただきます!」」」


 レストランフロアで朝食をとる。

 純白のテーブルクロスが敷かれた席で食べる優雅なモーニング。

 三人用の丸テーブルで、俺の席には美咲と由香里がいる。


「〈索敵〉を使うの、私で大丈夫?」


 由香里が尋ねてきた。


「ああ、問題ない」


 誰がどのスキルを使うかは慎重に選ばねばならない。

 燈花や毒嶋のようなエサ代が高い者の使用は避けたいところだ。


 他にも、戦闘特化の栗原には〈強化Lv.3〉を使わせたい。

 というか既に使用済みだ。


「やっぱり海にも敵がいるみたい」


 由香里は10万ptを払って〈索敵Lv.3〉を使用した。

 これにより、彼女の〈地図〉には周囲10キロメートルの敵が表示される。


 10キロはルーシーの索敵範囲よりも遥かに広い。

 そのうえ、空からでは分からない海中の敵も検知可能だ。


「襲われなかったのは〈聖域〉を使っていたからでしょうか?」


 美咲は自身の作ったオシャレなフランス料理を食べる。

 鴨肉を使ったもので、皿の手前にあるソースに絡めてペロリ。

 ナイフとフォークの使い方に慣れを感じた。


「遠いからかも?」


 答えたのは由香里だ。

 彼女は俺たちに〈地図〉を見せてくれた。

 たしかに海の敵とは数キロの距離がある。


「事情は分からないが、海上で長居するのはリスキーだな」


 美咲と違い、俺は箸でバクバク食べる。


「海の上なら安全だと思ったのに残念っすねー!」


 燈花も俺と同じく箸を使っていた。

 彼女の斜め前に座っているゴリラのジロウも箸だ。

 ゴリラなのに人間と変わらぬレベルの器用さである。


「するとすると! 本日の目的は新たな拠点の確保ですかな!?」


 琴子が言う。

 俺との距離があるからか大きな声だ。


「そうだな。昨夜に決めた通り奥多摩を目指すとしよう」


 田舎には敵が全然いない――。

 グループチャットで多くの生徒がそう言っていた。

 この「全然いない」というのは、文字通りの「皆無」を指すらしい。


 ただ、ずっと安全かどうかは誰にも分からない。

 だから、田舎に避難した生徒も定住することなく移動を繰り返している。

 食糧がそこらで手に入るため、そうした方法で逃げることが容易だった。


「エサ代が無料なら私らも岐阜方面まで行くのにね」と彩音。


 俺は「だなぁ」と頷いた。


 他所の連中はペットを維持する気がない。

 故に敵の全くいない田舎でも悠々と暮らすことができる。


 しかし、俺たちは違う。

 ペットの維持にこだわっているため、そこまで離れられない。

 だから東京からは出ないことにした。


 そこで選ばれたのが奥多摩だ。

 状況次第では手前の青梅(おうめ)市や八王子市でもいい。

 敵のひしめく都心部から離れているので安全度が高いはず。


 その上、1~2時間で都心部にアクセスできる。

 日中にポイントを稼ぎつつ、夜は安全な生活が望めるわけだ。


「問題は駐車場までの道のりだな」


 バスのある駐車場までは徒歩10分程度の距離。

 由香里の〈地図〉を見る限り、駐車場付近には敵が大量にいた。

 数え切れない程の大軍だ。


「昨日より敵の数が多いですよね」と美咲。


「明確に増えている。数倍か、下手するとそれ以上に」


 都心部全域にいた敵が集まってきているのかもしれない。

 多くの生徒が東京を離脱したことで集中しやすいのだろうか。


「ザコがどれだけ群れたってザコだ。俺が道を切り開いてやるよ」


 頼もしいセリフを言うのは栗原だ。


「今日はお姉さんだって負けないぞ栗原!」


 涼子はお茶碗に盛った白米を豪快にかきこむ。

 美咲の作ったフランス料理を、一人だけ和食の要領で食べている。

 タレのついた鴨肉を白米にバウンドさせる姿には妙なたくましさがあった。

 当たり前のように彼女も〈強化Lv.3〉を使用している。


「ふん、女のお前が俺に勝てるわけないだろ」


「栗原、今の時代だとそれは差別的な発言だぞ」


 メガネをクイッと上げる毒嶋。


「うるせーキノコ野郎!」


「ぐっ……。やっぱり人間はクソだ。俺にはお前しかいないよパンサー」


「ガルゥ」


 そんなこんなで朝食が終わる。


「改めて作戦を確認するぞ」


 俺は立ち上がり、皆を見回した。


「まずは敵を蹴散らしてバスに乗る。それで奥多摩ないしその近辺まで避難した後、昼休憩を済ませて再度のポイント稼ぎを行う」


 皆が静かに耳を傾けている。


「昨日の斧使いみたいなボス級が現れた時は、栗原がボスにタイマンを仕掛けて俺たちはザコ掃除に専念する。その際は愛理が〈無敵Lv.2〉を使って戦闘を支援すること」


 愛理が「了解」と頷く。


「あとは成り行き次第だけど、優勢なら〈無敵〉を追加して戦闘を継続し、劣勢なら〈聖域〉を使って撤退しよう」


「その時は私が使いますね」と美咲。


「ああ、よろしく頼む。もし美咲が何らかの事情で厳しそうなら彩音が使ってくれ」


「意識しておくわ」


「説明は以上だ。今日も皆で生き残ろう!」


「「「おー!」」」


 準備を済ませると、俺たちは船を下りた。

 周囲に敵は見当たらず、〈地図〉を見る限り安全だ。


 問題はこの先である。

 閑散としたターミナルを抜けると――。


「「「グォオオオオオオオオオ!」」」


 大量の徘徊者が待ち構えていた。

 〈地図〉も敵を示す赤い点で埋め尽くされている。


「思ったよりも多いな」


 〈地図〉でも多く感じたが、実際に見るとそれ以上だ。

 少なく見積もっても1000体はいて、どう頑張っても倒しきれない。


「どうするの? 漆田君。私も〈強化〉を使う?」と彩音。


「いや、彩音は万が一に備えていてくれ」


「了解」


「毒嶋、お前は〈強化Lv.3〉を使うんだ」


「え、俺!? 無理無理、戦えないって俺!」


 情けないことを言うキノコ野郎。


「誰も戦ってくれとは言っていない。バスへ逃げ込むのにトロトロされたら困るからだ」


 俺たちの中で特に機動力が低いのは琴子と毒嶋だ。

 だが、琴子はタロウに騎乗しているため問題ない。

 二人に次いで足の遅い美咲もウシ君に乗っているので平気だ。


「使ったぞ漆田! 強化した! すげー力だ! これなら俺でも戦えそう!」


「オーケー。なら戦うか?」


「いや、戦えそうなだけで戦えるわけではない!」


「はぁ……」


 俺も戦闘に備えて〈強化Lv.3〉を使用する。

 昨日の〈強化Lv.1〉よりも明確にパワーアップ。

 島で美咲の料理を食べた時に匹敵する。


「行くぞ! 駐車場まで走れ!」


「「「おう!」」」


 全員で敵に突っ込む。

 先頭はタロウだ。


「ブゥウウウウウ!」


 圧倒的な突進力で徘徊者を吹き飛ばしていく。


「遅れるなよ小野崎!」


「言うではないか栗原ァ!」


 タロウに続くのは栗原と涼子。

 栗原には劣るが、涼子もかなりの戦闘力だ。

 間違いなく俺よりも強い。


「よし、いい感じだ」


 敵の数は多いものの、危なげなく進んでいる。

 この調子なら――。


「ん?」


 順調に進んでいたタロウたちが止まった。


「どうした?」


 側面から迫り来る敵を倒しつつ前を見ると。


「どうやら俺たちを待っていたようだ」


 そう言って栗原が睨んだのは、昨日の大斧使いだ。

 昨日はいたペットのライオン軍団が見当たらない。

 俺たちに倒されたからだろう。


 ゼネラルはバスの前で仁王立ちしていた。

 それ自体も厄介だが、他にも問題がある。


「やれやれ、それは反則だろ……」


 なんと駐車場の車が破壊されていたのだ。

 俺たちのバスだけでなく、他の車も全て壊れている。

 車で逃げないようこちらの足を潰してきたのだ。


「風斗、どうするっすか!?」と燈花。


「関係ねぇ。ここでアイツを倒す! 車は少し移動すりゃ手に入るはずだ! さすがに街の車を全て壊したわけじゃないだろうよ!」


 仮に壊されていたとしても、入り組んだ路地を駆使すれば逃げ切れる。

 昨日と違って毒嶋も強化しているから大丈夫なはずだ。


「なら俺がボスとタイマンだな。ザコは頼むぜ漆田!」


「任せろ!」


 栗原がゼネラルに突っ込み、俺たちはそれをサポートしようとする。

 その時、ゼネラルがスッと左手を挙げた。


「フシャアアアアアアアアアアアア!」


 次の瞬間、ゼネラルの隣にどこからともなく新手が登場。

 現れたのは――リヴァイアサンだ。

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