未来的教育制度とは
私は小学生の頃から、ずうっと考えていたことがあります。
『人間は誰でも何かしら一つはスゴイ才能を持っていて、それを上手く見つけられた人が、今、第一線で活躍している人達なのだ』と。
そして、『自分の才能は、どうやったら見つけられるのだろう?』と、子供ながら頑張って考えてみましたが、結局何も見つけられず、『きっと自分が大人になる頃には、全ての人の才能がすぐに分かる仕組みが出来ているに違いない』とも考え、とても楽しみにしていました。
いや、本当にそうなることが時代の自然な流れだと、当時の私は信じていました。
しかし、その仕組みがまったく出来る気配が無いので、仕方なく自分で動くことになってしまったのが、今の、この状況です」
水玉さんは、ちょっと肩をすくめて左右に小さく両手を広げ少しコミカルなジェスチャーをした後に、大きく両手を広げながら言った。
「そうです、私が考える『未来的教育制度』とは、私が小学生の頃に考えていた『誰でも何かしら一つは持っている個々のスゴイ才能を探し出せ』そして、『それを育てろ』です」
水玉さんは広げた両手を机に乗せ、少し前のめりな体勢で話し始めた。
「まず言っておきますが、今の教育自体を全否定するつもりはありません。
当然、子供たちの中には今のお勉強やテストを楽しいと感じている子供もいますから。そういう子供は、今の教育を続けるべきだと思います。
何事も、極めることは、素晴らしいです。
私が変えたいのは、それ以外の子供たちの教育です。お勉強の授業が、時間の無駄になってしまっている子供たちです。
が、しかし。ある程度のお勉強は必要です。日常生活に欠かせない計算能力など、義務教育で学ぶべきものは、しっかしと身に着けて欲しいと考えています。
教育は大事です。
そして、それ以上の難しいお勉強を専門的に学びたい人は、どんどんやるべきだと思います。それもまた、個人の才能につながるものなのですから」
水玉さんは、ため息を一つついて、新しく注がれたコップの水を受け取った。
「と、いうわけで。
今現在の学歴社会に対して何の疑問も持っていない大多数の方々にとって、私の意見は理解し難いものだということは重々承知しています。
今現在、私の勝手な話を腹立たしい思いでお聞きになっている方も沢山いることでしょう。
そこは良く理解しています。
中でも特に、ご自分のお子さんが学校改革のお試し校に通われている親御さん方はご心配なさっていることと思いますが、そこはご安心ください」
水玉さんは、ここでまたフリップを1枚持ち上げた。AコースとBコースと書かれている横に、細かい字で何か説明が書いてある。
「今までと同じ学歴重視の授業を希望される方はAコース、そして個性重視の授業を希望される方はBコースと、選択して頂く様になっています」
おっさんは、フリップを画面に近づけて強調するような仕草で説明して、フリップをパタンと置いた。
「さて。お勉強は必要最低限という所まで、話したと思います。
ではそれ以外の時間、個性重視授業のBコースは何をするのか。
私は、ありとあらゆる物事を、何でも経験して欲しいと思っています。勿論、遊ぶこともとても重要です。
何故なら、遊びの才能はあらゆる方面に広がる無限の才能だからです。
才能のある子供が、どうしたら楽しく遊べるのかというスキルを磨いてくれたら、大人になった時に世界中の人々が楽しめるものを、次々と考え出してくれることでしょう。
そのためにも、子供の頃からとことん、全身を使っていろんな遊びを体験し、自分でどうすれば良いか考えて、その経験を蓄積していって欲しいのです。
この年代は本来遊ぶのが一番楽しくて、様々な才能を伸ばせる時期のはずなのに、今の教育ではそれを押さえつけて遊びの時間に無理やりお勉強をさせてしまっていることで、せっかくの遊びの才能を台無しにしている状態だと私は思うのです。
外に出て自然と触れ合って、体を動かして、風や重力を感じて、いろんな物を観察して、自分だけの発見をして、どうするともっと面白いとか、楽しそうとか、そういうことを自分で考えて。
そういう経験を日々繰り返すことが、机でお勉強することよりも、子供時代に必要なものだと私は思います。
しかし、今の子供たちは息抜きにできる遊びさえ、決まったルール内で指先を使ってちょこちょこ遊ぶゲームだけという悲惨な現状で、せっかくの才能が眠ったまま、起こされるきっかけを失っているのです。
そして、想像力の働くスキも、育つスキも与えられず、強制的なお勉強によって、せっかくの素晴らしい才能を発揮できるはずの脳みそが、皆と同じ、一律の『学校のお勉強を無理矢理詰め込んだだけの無個性脳』にさせられてしまっているのが現状です。
こんな、勿体ないことはありません。
私は、この『想像力』が大事なキーワードだと考えています。今の時代はこの『想像力』が一番欠落していると思うのです。
想像力は無限です。
想像することで、他人の痛みを感じ取り、優しくなれます。そして想像することで世の中は成長し、発展し、面白くなるのです。
そして、楽しいことは世界共通です。
皆が楽しめる物を次々開発して行くことは、そのまま世界平和にさえ繋がるのではないかと、私は考えるのです」
と、世界平和とか大きいことを言ったおっさんは、背筋をピンと伸ばし、大きく手を広げた。
「それぞれの才能を見つけ出し、それを育てる。
そしてその子の性格と合った、才能を活かせる仕事を将来的に見つける。
その子にしかできない、その子の才能を活かした、皆の役に立つ仕事をすることで、自分自身に自信と誇りを持ち、充実した人生を歩んで欲しいと考えています。
そうやって、全ての人がそれぞれの才能を活かした仕事をすることによって、世の中はレベルアップするはずです。
そうなれば、世の中は今よりもずっと効率が良くなり、正しい方向へ発展し、より良い世界になると私は考えています。
そして、それぞれの人がそれぞれの人の才能を活かした仕事をすることで、世の中の役に立ち、周りに認められて、やりがいのある仕事を生涯やり遂げることで、充実した生活を送ることができれば、まず、ニートやホームレスの人はいなくなると思うのです。
そして、様々な犯罪を企てる人や、薬物に溺れる人や、自殺をする人達も減るのではないかと、私は考えるのです。
そうです、つまるところ最終目標地点は『精神低迷期』からの脱却、なのです」
水玉さんは、大きく振り上げた手をそっと降ろした。




