04-20.元連隊長、協力を仰ぐ4
「後から強化した魔晶石では、最初から強い魔晶石を超えることはできないのですか?」
タモツは聞いた。
「そうだね」
と、錬金術師ライラスはうなずいた。
「魔力の放出されてしまった魔晶石に魔素を込め直すことは作ることよりたやすいけど、純度の高い魔晶石は何百年もああして整備されることなしに動き続けている。融合した魔晶石はおそらく頻繁に魔力を込め直す必要があるだろうと思うよ」
「蓄魔量の限界値が圧倒的に違う?」
「そうだね。そこに顕著に違いが現れると僕は見ている。古代の魔晶石は無限に稼働するのではないかと思うくらい、ずっと変わらずに動き続けているから」
ライラスはうなずいた。
「まあ、実際に実験してみる前から意気をくじくつもりはないんだけど、僕たちが作ろうとしているものは手間がかかる割にはそんなに万能なものではないだろうってことだ」
「完璧なものじゃないっていうのは分かりました」
イルマは言った。
「そもそも僕の理論があっていれば作れるかもしれない、っていうもので成功しないかもしれないけど……」
「大丈夫っすよ。先生の理論と俺の天才的魔導の才能があれば、また成功しますって!」
ヴィーツは自慢げに請け合った。
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それからまた三か月ほどが経過して、初歩的な実験は成功を収めた。
イルマが生成した赤ん坊の頭くらいの大きさの魔晶石に、タモツが生成した握りこぶし大の魔晶石を融合させることができたのだった。
やってのけたのはまたしてもヴィーツで、タモツの魔晶石は分解して魔素を放出すると同時にイルマの魔晶石に吸い込まれていった。
「どうやら無事に魔圧が高まっているな」
自分自身の魔導行使能力は低いライラスだったが、魔素を検知する力は強いらしい。出来上がった魔晶石の力が高まったことを保証した。
「続いて魔流量と蓄魔量を高めることができれば、性能的にはより純度の高い魔晶石に近づくことになる」
学院が課している魔導の課題については三人とも楽にパスしていたから、タモツは授業の時間も頭の片隅では魔晶石のことについて考えていたりする。
「どれくらいの機械を動かすことができるのかも実験してみたいですね」
「首都から馬で3時間ほどの場所に、疫病で封鎖された廃村があるはずだ。そこに風車小屋があったと思うが……」
錬金術師ライラスは言った。
「呪いや疫病のあとを恐れて、村を再興しようという人が誰もいないような土地だけれど、怖くないなら行ってみるかい?」
「ええええっ!」
ヴィーツは震え上がって、首をふるふると横に振った。