04-15.元連隊長、報告する
(ギスリム国王陛下、今、お時間をいただけますでしょうか?)
タモツははるか南にあるトラホルン王国の王都ボルハンの、王宮に向かって念を飛ばしてみた。
(ああ、かまわない)
ちょうど玉座の間にいたらしいギスリムからの応答はすぐにあった。
(押井商会からの定時連絡の中に、気になる情報がありました。バルゴサの首都ヌーン・バルグの上空に、人が乗った飛竜が舞うのを見たそうです)
(ほう? 伝説にあるバルグ王国の飛竜軍団を再現しようとでも言うのか。確認できた飛竜は1体か?)
(そうです。おそらく何年も前に卵を飛竜の谷から盗み出して、王都の竜舎で密かに育てていたものと思われる、とのことです)
(ふん。伝説の飛竜を軍の上空に飛ばせばバルゴサ兵の士気は上がるであろうな。だが、飛竜に乗った兵士が上空から矢を射かけてきたとしても、たかだか一頭ではさしたる兵力にもなるまい。捨て置け)
(はい。それについては、もしも複数見かけるようなことがあったら報告するように伝えてあります)
(ああ、それでよい)
ギスリムはそれについては関心を失ったようだった。
(あと、刈谷ユウスケが身を寄せていた先についての調査ですが、望星教団という怪しげな宗教団体にたどり着きました。まだ確信はありませんが)
(ボウセイ教団? 星を見る宗教団体ということか)
(はい。指導者らしきヌワージ導師という人物が、<星を見るひと>と呼びならわされているようです。未来を予見して世界を正しい方向に導くという題目を掲げているようなのですが、アルカディオンという女神、あるいは実在の人物をよみがえらせることを目的としているらしく、そのためには生贄も厭わないらしいです)
(そのいかがわしい集団の中に刈谷がいた可能性があるのだな? サエコを殺そうとしたと聞いているが、何かの儀式のためか)
(現時点では憶測でしかありませんが、そのように考えています)
(サエコは余にとっても友人だ。害を及ぼすようであれば黙ってはおれん。引き続き調査せよ)
(承知いたしました。力強いお言葉です、陛下)
タモツはそう念じた。
(魔導士の訓練についてはどうなっている?)
(学院の授業については順調です。あと、トラホルンに縁の深い錬金術師の教師に師事して<魔晶石>の作り方を学んでいた件ですが、半年が経過して三人とも生成できるようになりました。特にイルマは握りこぶしよりも大きい魔晶石を作成できます)
(ほう。かねてよりその報告には興味が大きかった)
ギスリム国王は嬉しそうに念じてきた。