04-13.元連隊長、打ち明ける2
「それで、君はその刈谷という男の行方を捜しているのかい?」
錬金術師ライラスは尋ねた。
「いいえ。刈谷は僕がそのとき殺しました。僕が一度死んだ10年前の対決の時に」
自分は人を殺したことがある、ということを思い出すたびにタモツは胃の腑に重いものを感じる。
「刈谷は死の直前に僕に呪詛をかけました。僕がサエコという女性を殺すように仕向ける呪いです。僕は彼女を人質に取られて、おびき寄せられる形で彼との対決に臨んだのですが、それは僕に彼女を殺させるための罠だったようなのです」
「それはまた、何のために? そのサエコという女性を殺害することが目的なら、それを君にさせる意味が分からない」
「はい、その通りです。しかし、理由ははっきりしないながら自衛官の手によって殺害させることが目的だったようなのです」
タモツは続けた。
「実はその前に一度、サエコという女性は呪いによって自害させられようとしたことがあります」
「よくその呪詛を破れたものだな。その女性はよほど精神力が強かったのか」
ライラスは驚いたようだった。
その呪詛を破った際の詳細はタモツには言いにくかったので、あいまいにうなずいておいた。
「同じ呪詛は二度ときかない、と刈谷は死に際に言っていました。それで他の自衛官に彼女を殺させようとしたようなのです」
「君は、そのサエコという女性とは親しい間柄だったのかい?」
「はい。その……、恋人といって良ければ、そうだったような感じです」
「なんだかはっきりしないなあ」
錬金術師ライラスは苦笑した。
「その話を聞いていると、望星教団の怪しげな印象と近しいものを感じるな。君は死んだ刈谷の背後に何者かがいると考えて、それを望星教団だと踏んでいるのだね?」
「はい。カディッサの路地裏で乞食のおじいさんに聞いただけ、という頼りない話ではあるのですが今はその線で調べようと思っています。刈谷は死に際にヌワージという単語を叫んでいました。人の名前だと思います。叫んでいたのはトラホルンの言葉とは少し違う、おそらくカディール語だったと思うのですが」
「その刈谷の背後にある組織が望星教団だったとして、君はどうしたいんだ?」
「今はまだ分かりません。僕に力があるなら組織をつぶしたいかもしれません。ただ、教団が刈谷の背後にいたとして、サエコの殺害にこだわる理由を突き止めて、彼女の身の安全を保証したいのです」
タモツは言った。