04-12.元連隊長、打ち明ける
「しかしまた、なんでそんなことに関心を持ったんだい?」
錬金術師ライラスはタモツに尋ねた。
「タモツ、君は様々な面でとても10歳とは思えないな。驚かされることばかりだ」
「ええ、まあ、その……。生意気な子供だとはよく言われますが」
タモツは言いよどんだ。
が、思い切って切り出してみた。
「ライラス先生は、<転生>というものを信じますか?」
「転生? 魂が生まれ変わるというあの伝説かい? バルゴサでは広く信じられていると聞くけれど」
「信じていただけないかもしれませんが、僕は一度人生を終えて生まれ変わった人間です」
「なんだって?」
ライラスはぽかーんとした顔をして、タモツを見つめた。
「冗談で言っているわけではないんだね」
ライラスは真顔になってタモツを見つめ直した。
「つまり、君には前世の記憶があるのかい?」
「はい。4歳のある日に唐突に思い出したんです。自分が何者であるかということを」
「それは君たち別世界の人たちには、良くある話なのかね?」
「僕たちがもともといた世界では伝説の類でした。しかし、この世界に移動してきたニッポン人の間では珍しいことではありません」
「驚くべき話だな。トラホルンが別世界から来た人間たちをかくまっているという話は大陸中に広まってたし、その人たちが大陸の辺境地帯に新国家の樹立を宣言したという話も聞こえてきているが、その実態はよく知られていない」
錬金術師ライラスは興味深そうに言った。
「いったい君たち日本人というのは、何が目的でこの世界にやってきたんだい? トラホルンを助けるためなのか?」
「それが分からないのです。僕たちにしてみれば、ただ何者かに召喚されてきただけで、気が付いたらこの世界にいたのです」
「なるほど。しかし、現状君たちはこの世界でトラホルン王国に味方する勢力として存在している。トラホルンの白魔導士たちが君たちの召喚に関わっているとみて間違いないだろうね」
ライラスはそう分析した。
「それでさっきの話に戻るが、君は転生した人間だということだね。にわかには信じがたいが、君が身に着けている知識や教養、落ち着いた態度や考え方などを見れば、その説明で納得するしかないな」
ライラスは改めてそう言った。
「実に興味深いよ。それで、君が生まれ変わった人間だということと望星教団を探っていることにはどんな関係がある?」
「はい。僕は前世で刈谷ユウスケという敵と戦い、彼の呪いが原因で自ら命を絶つことになりました」
タモツは淡々と説明した。
「刈谷という男はかつては僕の同期生でした。日本人の軍隊、ジエイタイという組織の中でです。親しい間柄だったと言ってもいいです。しかし彼は組織を捨てて、この世界の中に一人飛び込んでいきました。今でこそ日本人はトラホルン人と共存関係にありますが、かつてはごく限られた接触しかしておらず、組織を捨てて外に出ていく人間というのはほぼ皆無だったのです」
「うーん、なるほど?」
錬金術師ライラスは、ここまでの話に何とか食らいついてきてくれたようだったが、異世界自衛隊とトラホルンの関係性などについて予備知識があるわけではなかったから、どこまで深く理解してくれているのかは分からなかった。