04-05.魔導少女、錬金術を学ぶ4
「ライラス先生の研究室からしばしば奇声が聞こえてくる」
という苦情を受けるようになったので、イルマは声を出さずに魔晶石を作成する訓練をやり直すことになった。
タモツとヴィーツは親指大の魔晶石に<見えざる盾>の術式を編みこんで、互いに小石を投げあって発動させるということをしている。
「火球の術とかを編みこんで使ってみたいんだけどなあ」
「護身用にはいいだろうね。とっさに敵に投げつけて使える」
「物騒なものはやめてくれよ、君たち」
男たち三人が研究室の隅っこに固まっている中、イルマは反対側の端で一人集中していた。
三人がちらちらとこちらを見てくるのには気づいていたが、そんなことを気にかけている余裕はなかった。
「!!」
心の中でだけ、ふんっ! と声を上げて魔術を練り上げ、どうにか魔素の結石に成功した。
それはイルマの目の前の机の上に、こつっ、と小さな音を立てて落ちた。
「できたっ!」
と、イルマは安堵の息を吐いた。
「えーっ……」
近寄ってきたヴィーツがものすごくがっかりしたような声を上げた。
「できたのって、これ?」
ヴィーツが指さした先には、今しがたイルマが結石させたごくごく小さな、小指の爪くらいのサイズの魔晶石が転がっていた。
「仕方ないでしょ、これでも頑張ったんだから!」
「まあ、大きなものを何度も作った実績はあるんだから、いずれ無言でも作れるようになるんじゃないのかな」
当たり障りのないことをタモツが言った。
「最後にあのへんな叫び声をあげるのがコツだったのかよ……」
ヴィーツはあきれたように言った。
「あれはあんまり真似したくないんだけどな」
「なによーっ! マネできるもんならしてごらんなさいっ!」
「まあまあ。無言であのサイズのものを作れるまで訓練あるのみだ。とりあえず小さいとはいえ結石に成功したのは良かった」
ライラスもそう言ってとりなした。
その後、イルマが無言のまま作れる魔晶石のサイズはだんだん大きくなっていったが、タモツやヴィーツの作る魔晶石はあまりサイズに変化がなかった。
「僕たちの才能には限界があるということでしょうか?」
とタモツがライラスにたずねたが、ライラスは分からないと答えた。
「これだけ短期間で魔晶石を生成できて、なおかつ術式まで込めることができたんだ。僕自身の才能をはるかに上回るのは間違いないし、その才能の限界なんて僕には見極められないよ」
それから、ライラスは付け加えた。
「ただ一つ言えることは、この分野においてイルマの才能がとびぬけて高いっていうことだけだ」