04-04.魔導少女、錬金術を学ぶ3
ヴィーツとタモツが魔晶石の生成に成功してから、一か月ほどしてようやくイルマも同じことができるようになった。
とはいえ、その一か月の間に二人はもっと先に進んでいて、魔晶石に初歩の術式を込める段階にまでに至っていたのだったが。
「この先は僕自身には未知の領域なんだ。認めるのも悔しいけど、僕は魔導士としての才能に恵まれているほうではないからね」
ヴィーツとタモツが魔晶石に術式を込める前に、ライラスは二人に向かって言った。
そのころ、まだイルマは魔素の結石に手間取っていた。
「むにっ、ぎゅーっ、パッ!」
ヴィーツの謎指導をくちずさみながら、イルマは魔晶石の生成を試みていた。
「おーいイルマ、ちょっと黙っててくれよぅ。俺たちこれから集中しなくちゃならないんだからさー」
「うっさい! こっちもこっちで必死なんだからっ! むにっ、ぎゅーっ、パッ!」
「うるさいってばよー」
「まあまあ、ヴィーツ。こっちはこっちで集中してやろう」
タモツはヴィーツをとりなしていた。
「きぃいいいっ!」
なかなかうまく行かないので、イルマはとうとうブチ切れた。
が、なぜかその拍子にイルマの目の前に魔晶石が生成された。
「あ、できた」
「おい、マジか……」
ヴィーツがイルマの目の前の机を見て驚きの声を上げた。
「なんだそれ!? でけえ!」
イルマが生成に成功した魔晶石は、タモツたちが作れる親指大のものとは明確にサイズが違う、握りこぶし大のサイズだった。
「こ、これは! 最初からこの大きさの魔晶石を作れるなんて信じられない」
「イルマ、すごいな……」
ライラスとタモツが魔晶石をのぞきこんで口々に言った。
「なんかできた。むにっ、ぎゅっ、パッ、きぃいいいいっ! で出来た」
イルマは呆けたように無表情でそう言った後、ヴィーツに向き直って勝ち誇った。
「誰が才能ないですって!? 見なさい、このサイズ、この輝きっ!」
「そうやってけしかけたら、イルマねえさん燃えるじゃねえすかーっ。思いやりですよぉ、思いやりっ」
ヴィーツは笑いながらそう言ったが、内心ではイルマの才能にちょっとびびっているようだった。
「あーそうですかっ。お気遣いありがとうございましたぁ」
成功したのはヴィーツのおかげでもあると思ったので、イルマはそれ以上追求しなかった。
それ以降もイルマは何度も同じサイズの魔晶石作成に成功したのだったが、そのたびに
「きぃいいっ!」
と叫ぶので、ヴィーツにはとても嫌がられた。