04-03.魔導少女、錬金術を学ぶ2
教師ライラスの指導の下で錬金術を学び始めてから半年ほどが過ぎていった。
錬金術師ライラスは魔導の力は弱いものの、研究者、指導者としては能力が高かった。
ライラスの申し出を受けてイルマ、タモツ、ヴィーツの3人はライラスの研究室に足しげく通った。
ライラスは休日にも特にこれといった趣味なども無いらしく、研究室にこもっていることが多かったようだった。
それで、イルマたちはしばしば休日にも研究室に顔を出して指導を受けることがあった。
ヴィーツは相変わらず魔導の才能をいかんなく発揮し、ライラスが説明する理論など半分も理解しないのに、実技となると他の二人に先んじて難なく成功させてしまった。ついに小さな魔晶石を完成させたのであった。
「ヴィーツくん、君は本当にすごい才能を持っているんだなあ」
本人があまり優秀な魔導士ではないライラスは、うらやましそうにそう言った。
「まあ、そうっすね。なんでですかね」
褒められるとすぐに調子に乗るヴィーツは、にやにやと笑いながらタモツとイルマのほうを見やった。
「あー、むかつく!」
負けず嫌いのイルマは口汚く言った。初めのころはイルマの悪態にすごく驚いていたライラスだったが、やがてこっちが地なのだと理解したらしく苦笑いするようになった。
タモツは焦ることなく自分のペースでいくつもりだったので、淡々と術式を繰り返していた。
「練り込んだ魔素が、なかなか結石しないなあ……」
「なんつうかさー、むにっとしたやつを、ぎゅーっとして、パッて感じなんだよ」
「全然わかんないっつーの!」
タモツに説明を試みたヴィーツに向かって、イルマは文句を言った。
「あ、できた」
タモツが唐突に言った。ライラスがそれを覗き込んでうなずいた。
「うん、できてる」
「なー? むにっ、ぎゅーっ、パッだったろ?」
「うん。なんかまあ、そう言われたらそんな感じだった」
ヴィーツがタモツの肩をばんばん叩いて言い、タモツは微妙なあいまいさで応えた。
「えーっ。なんであたしだけ出来ないのーっ!?」
イルマはふてくされた態度で椅子から足を投げ出した。
「教えてあげようイルマ君。それはね……」
ヴィーツがニヤニヤしながら近づいてきて、
「君に、才能がないからだっ!」
びしぃっ! と右手の人差し指を突き付けて言った。
「おうふっ!」
イルマの肘打ちはヴィーツのみぞおちに綺麗に決まった。