03-07.元連隊長、制約を受ける2
タモツたちをはじめ、生徒たちの誰もがその制約を受け入れたので、翌日彼らは魔導学院の馬車に乗って帝都の中枢にある魔導士ギルドの建物に向かった。
帝都カディッサ建設当初からそこにあるというとても古い建物で、石造りの5階建ての塔に、増築された2階建ての建物が併設されていた。
タモツたちはナーセル教頭に続いて魔導士ギルドの中に入っていった。
「ギルドの中には外部の者に侵入を禁じられている場所もありますから、余計なところに立ち入ったりしないように」
と事前に注意されていたために、タモツは興味深く建物内部を見やりながらも、多くを見ることはできなかった。
「新たに誓いを立てる者たちを連れてまいりました」
ナーセル教頭は門番に言い、塔の入り口はその重い扉をあけられた。タモツたち8人の子供たちはぞろぞろと中に入った。
1階のはずれには下に続く小さな階段が設置されおり、暗く冷えた地下室へとタモツたちは降りていった。
壁際には獣脂を燃やす明かりが点々と設置されていたが、それでも塔の地下はほの暗い。
地下へ下りる階段は思ったよりも長く、タモツたちは地下3階くらいの深さと思われるところまで下りた。
その先にはまた門番が厳重に警戒をしており、ナーセルが用向きを伝えると扉があけ放たれた。
タモツ以外の7人の生徒が思わずざわめいた。
タモツは声を上げることがなかったが、それでも驚きを飲み込んでいた。
そこには鈍い青色に光る巨大な、人の頭よりももっと大きな宝石が台の上に設置されていたからだ。
(魔晶石!)
タモツはこれの、もっと小さなサイズのものを見たことがあった。
かつて森本モトイの口の中から吐き出され、転送門の術式を発動させて刈谷ユウスケを出現させた石だった。
(なんて大きさだ。あのサイズの石でさえ転送の魔導を封じることができたというのに……)
いったいどれほどの魔力が込められているのか、誰がこれを作り出したのか。
タモツの脳裏にはいろいろな疑問が沸き起こったが、ナーセル教頭は多くを説明してはくれなかった。
「では、一人ずつこの石に手をかざして魔導の誓いをたてなさい。<われは制約に従う>と、ただそれだけを言えば良いです」
生徒たちが石を目の前にして恐れをなすなか、イルマとヴィーツが積極的に前に進み出て早々に誓いを済ませた。それを見て他の生徒たちも次々と制約を受けはじめ、最後にタモツがそれを済ませて全員が魔晶石に自分を登録し終えた。
「いいでしょう。これであなたたちはカディールの魔導士ギルドに登録されました。身分にふさわしいふるまいを心掛けなさい」
生徒たちは次々に、はい、と返事をした。
(異世界自衛隊の中に魔導士軍団を設立する、なんてことはこの制約のために不可能になったな)
タモツは帰りの馬車の中でこれからのことについて考えていた。
(いや、制約によれば中級以上の魔導の伝授にだけ制約がかかるのか? あるいは僕自身が魔導士の身分を捨てて、イルドゥ老師のように講師として隊員たちを指導するというのも理屈では可能なのか……)