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03-02.元連隊長、先輩の後をつける

タモツやアストランの同級だった一人の女の子が、ある日行方をくらました。

魔導学院の教師たちはカディッサの都市警備隊に捜索願を出したが、翌日に女の子は帝都の一角で遺体となって発見された。

発見場所は川のほとりで、橋の近くであった。橋の下をねぐらにしていた浮浪者がその遺体を発見した。


他殺を疑われて警備隊付きの医師が死因の特定を行ったが、毒物による自殺と断定された。

女の子が飲んだ毒物は、カディールではジッドと呼ばれる魔酒であった。トラホルンではキィラルという名で知られている。

タホという名のその女の子は12歳。もう4年間魔導に開眼できていなかったことを悩んでいたらしかった。


「ジッドっていうのは丁半博打なんだろ? 魔導に開眼するか死ぬかが半々だって言われているけど」

「僕がパバール導士から聞いた話では、もっと確率は低いっていうことだったけど。5人に一人だとか」

自室でヴィーツとタモツは話し合った。

「それに、運よく魔導に開眼しても寿命が縮むという話だったよ。悪いことが多すぎるよ」

「それでも、この国で魔導士を目指して落ちこぼれるっていうのはつらいことだったんじゃねえの?」

ヴィーツは同情したように言った。タホとは学期が同じ時に、少しだけ親しかったようだ。

タモツの頭の中には、同じように魔導が開眼しないことを悩んでいる同期生のことが浮かんでいた。


タホの件があって以来、アストランは明らかに以前とは様子が違っていた。

第三学期の実技試験に取り組む姿勢も意欲の無さが感じられ、食堂で一緒になっても青ざめた顔をして食事が進まない。

ヴィーツやイルマにこのことを相談するべきかタモツは悩んだが、上の学期で新しい友人たちと楽しそうにしている二人を見れば何とも言い出しづらかった。


(アストラン先輩はジッドを手に入れる気だ)

と、タモツは直感した。

ある日の食堂で、アストランはここ数日の様子が嘘のように晴れやかな顔をして、ほとんど陽気ともいえる口調でタモツに親しく話しかけてきた。

(これは覚悟を決めた人の言動というやつだな)

と、タモツはアストランの顔を見ながら思った。


それからタモツはアストランの行動をそれとなく見張り、休日にアストランが外出した時にはそっと後をつけた。

どこから入手経路を知ったのか分からないが、暗黒街と呼ばれる一角にアストランは入っていく。

そして、薄汚い乞食と話をして金を渡し、その男から聞いたらしい別な場所へ向かって行った。


(建物の中にでも入られたら厄介だ。ここで先輩を止めるしか――)

とタモツが思い立った時、ひげ面の大男がアストランの前に立った。酔っぱらいが火酒の瓶でも勧めるかのように、アストランに小さな陶器の酒瓶を差し出した。

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