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02-14.元特務隊長、イェルベとトラザムへ行く

「あ、タイチョー、行ってらっしゃーい」

近所のコンビニに買い物に行く夫でも見送るような気楽さで、イムルダール駐屯地を出発するハジメをカナデが見送った。

「後のことはこのワタクシ、木下カエデ副大統領に万事お任せ下さいっ!」

カナデはそう言って、自信満々に右こぶしで胸をたたいてみせた。

「誰が副大統領だよ。新日本共和国にそんなポストはねえっ!」


「えっ? 大統領夫人って国のナンバー2じゃなかったんですか?」

「ちげえよ。ナンバー2は森本モトイのじいさんだろ」

「じゃあカナデちゃんはいったい何をすればいいのでしょう?」

「国賓のおもてなしとか、なんかそんなのだろ。外交上のホステスみたいな」


「だって誰も遊びに来ないじゃないですかぁ。バルゴサのアガシャー王とかイズモに呼んでくださいよぉ」

「そいつが来たらこの国は終わりだよ。二足歩行をする小型の竜に乗って攻めてくるらしいぜ」

「その竜さんたちはイェルベ川を泳げるんですかねえ?」

「知らねえよ。もう、お前にかまっていたらいつまでたっても出発できねえ。俺はもう行くからな」


ハジメは妻との会話を打ち切ってイムルダール駐屯地を出発し、船で川を渡ってまずはイェルベ駐屯地に立ち寄った。

前触れのない突然の訪問にイェルベ駐屯地の首脳陣は慌てたが、ハジメは非礼を詫びつつ一般の隊員たちに親しく声をかけて回った。


西方開拓を延期したイムルダールもそうだったが、イェルベも東方重視のために人員を削減し、人をカリザトやバイアランに回していた。魔獣討伐のために動ける兵員は少なくなっていたが、出現頻度が以前より激減していたので問題は無さそうだった。


「じゃ、次行ってみよー」

ハジメはイェルベ駐屯地から南下し、南部の森林地帯に存在するトラザム駐屯地を見舞った。

かつて異世界自衛隊発祥の地で唯一の駐屯地であったトラザムは、今では兵站基地のような性質に代わっていた。

駐屯地に居住する人員は技官の比率が多めで、新日本国の主要な産業である紙の生産拠点でもあった。

駐屯地近辺の森林についてはトラホルンとの協定によって伐採が許可されており、一方で植樹活動なども行われている。

森林地帯から魔獣が出現することもあったために、伝統ある第1普通科連隊の人員配置はイェルベと比べれば多いほうだった。

ハジメはここでも突然の訪問に驚かれたが、仰々しい出迎えを嫌ってのことだと言って、一般隊員たちの業務を視察して親しく声をかけて回った。

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