01-03.元連隊長、北上する
キャラバンは丘陵地帯を抜け、カディール帝国の首都カディッサを目指して北上した。
タモツたち子供3人は隊列の中央に守られた4号車に乗り込んでいた。
キャラバンの1号車と6号車には護衛の戦士たちが乗っており、その他にはおおむね商品が積み込まれていた。
タモツたちの乗る4号車も、トラホルン国内から運んできた様々な商品がうずたかく積まれており、子供たちを圧迫していた。
「早くつかねえかな。狭くてかなわないや」
先の戦闘で敵を焼き払ったヴィーツが不平をこぼした。
「仕方が無いでしょう。ちょっと、くっつかないでよヴィーツ」
見えざる盾で敵の矢を防いでいたイルマがヴィーツの身体を押し戻した。
「もうちょっとの辛抱だよ。カディッサってどんなところだろうね」
タモツはのんきにそう言った。
ヴィーツは寺院に拾われた孤児で、トラホルン人とカディール人の混血であった。
トラホルン国王ギスリムの計略により、カディールに送り込まれるべく王宮に身柄を引き取られて訓練を受けた。
肌の色が白く、髪の毛は赤茶色で目の色は青みがかった灰色をしている。
両親の名を知らぬため家名はない。ただのヴィーツである。今年で9歳になる。
粗野で生意気な男の子だが、魔導の実技に才能があった。
特に火炎系や爆発系といった術式に天分がある。
イルマ・ラティルは商人の娘であった。カディール人の父親はかつては大きな商売をしていたが大失敗をして借金を作って没落した。
ヴィーツと同じくトラホルン人との混血児であり、生まれつきカディール語も話すことができた。
ヴィーツと同じくカディール行きに選ばれた人材の一人であり、身柄は王宮に買い上げられている。
色白で、淡い栗色の髪と薄茶色の瞳をしている。3年にわたる訓練期間のうちにめっきり美しくなった。歳は11歳である。
頭の回転が速く気が強いが、普段は物腰穏やかな淑女を装っている。防御系の魔導を得意としていた。
そして、沖沢タモツである。転生後の年齢は7歳だが、前の人生で60までを生きていた。
生まれは日本人で、元自衛官。前世ではその生涯を自衛隊にささげたが、今回の人生では魔導士を極めたいと思っていた。
ギスリム国王との間に、タモツが魔導を学ぶ手筈を整えてもらう代わりに仮想敵国であるカディール帝国の内情をさぐり、トラホルンに情報を渡すという密約を結んでいた。
3人は帝都カディッサに到着し次第、魔導学院に入学してそこで暮らすことになっている。