02-07.第2王女、野望を語る
「お前の思い描いた通りの流れになったな、サルヴァ」
後宮の一室、サルヴァ第2王女の自室をギスリム国王が訪れていた。
「お姉さまは表立ってはお父様に反抗いたしませんけれど、思うようにさせて差し上げたほうがよろしいかと」
「ロトムを婿に取るにあたっての大義名分、どのようにしたものか私も考えあぐねていたが……」
「陸上自衛隊最強の戦士を倒したとあれば名分も立ちましょう? 私もお姉さまに恩を売ることができましたし」
「ふむ……」
ギスリム国王は愛娘の顔を見て少し考えたようだった。
「もしあの戦いでオカザキのほうが勝っていたらどうするつもりだったのだ?」
「それはないと見ていました。連戦による疲労、年齢による衰え。ロトムが勝つ絵図しか見えませんでしたわ」
サルヴァ王女は年に似合わない狡猾な表情を浮かべた。
「それに、もしそうなれば他に手はありました」
「というと?」
「秘密ですわ」
「教えてくれ。参考のために知っておきたいのだ」
「しかたありませんわね。私が姉のためとしてオカザキに再戦の申し入れをします。それからオカザキに接触して<あなたのことが好きだから次の試合、ロトムに負けてほしい>と涙ながらに訴えます」
「ほほう。それでオカザキは動いたかな。わざと負けるなど戦士の矜持が許さないのではないか」
「ようは心を揺さぶればよいのです。再戦の時にオカザキが全力で戦えなくなればそれでよろしい」
「そなたは恐ろしい娘だ」
ギスリム国王は苦笑した。
シーリンとて馬鹿な娘ではないが、純朴で素直すぎるところがあった。
一方で、サルヴァは生まれつきの策士であった。二人の娘を平等に愛そうと思っても、どうしても贔屓をしてしまう。
サルヴァ姫はギスリム国王にとっては可愛くてたまらない、自分の分身のような存在であった。
「それにしても良かったのか? そなたは従兄弟のハギンと結婚を誓い合っているのかと思っておったが」
「未来の王を産んで国母になろうと考えていたときにはそうでした。王の血筋に生まれついた二人なら王権にも近かったことでしょう」
こともなげに、サルヴァは言った。
「ですが、予想外にお父様に王座が転がり込んできた。叔父様たちのふがいないことと言ったら」
「なかなか手厳しいな」
「私は女王になりたいのです、お父様」
第2王女サルヴァは父王の顔をまっすぐ見て、言った。
「王配が誰であろうと、そんなことは大した問題ではありませぬ。ならば<竜殺し>の名声を持つあの男が良い。性格も穏やかで戦いに強い。うってつけでございましょう」
サルヴァはそう言って、邪気のない笑みを浮かべた。




