10-16.元連隊長、新たな部下を得る
「結婚っ!?」
タモツは思わず驚いて聞き返した。
「え? 付き合うとかそういうんじゃなくて、いきなり?」
「うん」
ちょっとぼーっとした様子のまま、ヴィーツは言った。
ヴィーツはあまり転送門の術が得意ではないので、タモツがわざわざ時間をおいて迎えに行ったのである。
「え? イルマもヴィーツのこと、前から好きだったの?」
「まあ、嫌いではなかったかな」
イルマはつーんとした様子で言った。
「私がタモツのこと好きだって言ってたからって、私に対して好きなそぶりを見せないようにしてたとことかね」
「はあ、そうですか」
と、タモツはうなずいた。
ヴィーツは何かの機械人形にでもなったかのように、ぎこちない感じであった。
「ヴィーツ、だいじょうぶなの? どうかしちゃったの?」
「ア、ハイ、ダイジョブデス……」
「いや、全然大丈夫じゃないでしょ」
「ああ、うん、やべえよ、俺どうしたらいいんだっ!」
「どうしたらって、結婚したいっていったのあんたでしょっ!」
イルマはあきれたように言った。
「ヴィーツと結婚したらイルマも日本人っていう扱いになると思うけど、それは問題なし?」
「そうねえ、悪くはないかな。カディールびいきではあったけど、実際のところカディールにそれほどの愛着は無いし」
イルマはしれっとそう言った。
「ヴィーツの職場がカリザトだから、君も引っ越すことになると思うけど?」
「それは問題ないわ。今の仕事もそれなりにやりがいを感じてたんだけど、日本語で言うところのセクハラってやつ? なんか中年の上司に迫られたりして、やめてやろうかと思っていたところなのよ」
「そうなんだ。大変だったね」
タモツは言った。
「もしかしてイルマも自衛隊に入るかい? 僕らは今、世界平和を維持する目的で魔導戦車の量産と、それを操縦できる魔導士の育成を課題として取り組んでいるところなんだ。君にも参加してもらえると助かるな」
「それはちょっとやりがいがありそうじゃない? いいわよ!」
イルマは快諾した。
「あと、君の名前だけど日本の慣習からするとイルマ・トヨトミか、イルマ・トヨトミ・ラティル。あるいはトヨトミ・イルマとかになるんだけど、それは問題ない?」
「トヨトミ? 変な家名」
「何を言う! 恐れ多くも大統領閣下からいただいた家名であるぞっ!」
ようやく再起動したヴィーツがイルマに向かってかみついた。
「イルマ・トヨトミ・ラティルねえ……。まあいいかそれは別に」
イルマは仕方なさそうにそう言った。