10-15.新日本人、告白する
タモツはイルマとの念話を終えて、トヨトミ・ヴィーツのほうを見た。
「前にみんなで会ったあの店で待ってるって」
と、タモツは言って笑った。
それから転送門の術式を編んで、再びヴィーツのほうを見た。
「じゃあ、行ってこいヴィーツ」
ハジメがヴィーツの肩をどん、と叩いた。
「とりあえず告ってこないことにゃ、何も始まらねえだろ」
「は、はいっ!」
尊敬する大統領にどやされて、ヴィーツは覚悟を決めた。
「トヨトミ・ヴィーツ、いってきますっ!」
自分を囲んでいる人々に対して10度の敬礼をして、ヴィーツはタモツが作り出した転送門に身をくぐらせた。
そして、カディールの首都カディッサのはずれ、人気のない空き地に転送されたヴィーツはあの店に向かって走った。
何度か訪れたことのある飲食店にたどり着いたときには、すでにイルマが着席してヴィーツを待っていた。
「なーに、ヴィーツ。私に話があるとかって」
イルマはぷいっとつれない感じでヴィーツを迎えた。
ヴィーツはそれに、内心ビビってしまった。
「あー、いやー、その。イルマねえさん、お元気でしたか?」
「あんたのそれ、久しぶりに聞いたわ」
イルマは思わずぷっと吹き出した。
「まあ、あんた私の弟みたいなもんだけど」
「あのさー、俺、今日から日本人になったんだよね」
「え? なにそれ。あんたもしかして日本人女性と結婚できたの?」
「あ、いや、そうじゃなくて。なんか大統領が俺を日本人にしてくれた」
「はあ? なんでさ」
「なんかさー、あれかな。世界を救った功績で?」
「ごめん、全然何を言っているのか分かんないんだけど」
「それはおいおい話すけど、とにかくタモツと一緒に世界を救ったの俺は」
「ふうん」
イルマは疑わし気な表情でヴィーツを見た。
「で、その功績が認められて日本人になったと。まあ良かったじゃない。前から憧れていたもんね。話っていうのはその報告か。念話で済むところをわざわざ会いにくるなんて、あんたも結構律儀よね」
「あ、いや、それはついでというか、本題じゃないんだ」
ヴィーツはとうとう勇気を出して言った。
「イルマさんっ! 前からずっとあなたのことが好きでしたっ!」
「……うん。知ってた」
「は?」
「そうなんじゃないかなーとは思ってた」
「あ、そうなんだ」
ヴィーツは逃げ出したい気持ちでいっぱいになった。
「で、好きだから何なの?」
「あ。結婚したい」
ぷっ、とイルマはまた吹き出した後に笑い出した。