10-14.新日本人、自衛隊に入る
「有能なトラホルン人少年が日本人になりたがっているけどいいか? っていうことで推薦してみたら、いーんじゃね? ってなった」
ハジメはこともなげにヴィーツに言った。
「で、ついでにお前今日から自衛官な。俺は3曹からを提案したんだが、形式上2士からになった。たぶんすぐに出世することになるけどな。魔導戦車動かせる数少ない人員だから」
「……」
ヴィーツは驚きに固まってしまった。
「なんだ、不服か?」
ハジメはニヤリとして、ヴィーツのおでこを指でつついた。
「と、とんでもありませんっ! 望外の幸せでありますっ!」
ヴィーツはびしいっ、と姿勢を正した。
「ようこそ新日本共和国へ、トヨトミくん。今日からここがお前の祖国だ」
「はいいっ!」
ヴィーツは思わずタモツに抱き着いた。
「……ってことでー、お見合い大作戦のほうはどうしますぅ?」
木下ハジメ大統領の後ろから、夫人のカナデがひょこっと顔を出した。
「ヴィーツ君美少年だから、国籍目当ての結婚でもひとまずは構わないーっていう子たち、何人か探してはいたんだけど?」
「え? あー、そのー……」
「結婚しなくても日本人になれるんだったら、他に好きな人いる?」
カナデは笑って言った。
「いやー、まー、そのー……」
「え? ほんと? ヴィーツ好きな子いたんだー」
タモツはちょっと興味を惹かれてヴィーツのほうを見た。
「あのイルマって子だろ? 昔会った時はとんでもないクソガキだったけどな」
ハジメがそう言って笑った。
「え? そうなの? 全然気が付かなかった!」
「タモツはそういうところ鈍いからなあ」
ハジメはあきれたように言った。
「イルマって、ずっとタモツのことを好きだ好きだって言ってただろうが。だから遠慮してたんだろ?」
「あ、はい……。そうですね」
ヴィーツは認めた。
「じゃあ、思い切って告白してしまいましょーっ! で、もしダメだったらお見合い大作戦続行でっ!」
「えー。告白っすか」
ヴィーツはたじたじになった。
「言いづらかったら、僕の方から伝えてみようか?」
とタモツが言ってが、ヴィーツはそれは拒否した。
「さすがにそれは女々しいっていうか、ダメだろー」
「そっか。それならそうと、さっそく告白してみようよ。待ってて、イルマに念話で連絡してみるから」
「わーっ! ちょ、まてタモツっ!」
慣れたもので、タモツは現世で携帯電話でも使うみたいに気軽に念話を繰り出すようになっていた。