10-11.元連隊長、不死の王と対峙する2
「ハハハハッ! 言ったじゃないですか。僕の魔導は二回に一回は不発に終わると。だから魔導での戦いにならないように、あらかじめ防御を整えていたのです。沖沢さんにせよ誰にせよ、いずれはここに攻めあがってくる者がいるだろうと思いましてね」
刈谷は笑った。
「こんなに早くお客さんが来るとは思わなくて少し油断していましたがね。いずれは転送門を通じて世界各国にゾンビを送り込み、血のおいしそうな人たちだけに、僕の食糧として生きる権利を与えてあげようと思っていました」
「なんだとっ……」
タモツの脳裏に恐ろしい想像がよぎった。
「かくして世界は不死者に満たされ、僕はその王として永遠にこの世界に君臨する」
刈谷は玉座を降りた。そして、玉座に立てかけてあった一本の長剣を鞘から抜いて構えた。
「さて、魔導が使えない以上その腰の銃剣と拳銃で戦いますか? ちなみに弾丸を食らってもこの肉体は再生しますけどね」
タモツはにじり寄ってくる刈谷をにらみつけていた。
刈谷と話をしながら、タモツはでヴィーツ、アストランとは念を交信していた。
(……タモツ、完了した)
アストランが念を送ってきた。
タモツが刈谷と対峙している間、アストランは密かに部屋の壁に手を触れて、その特殊体質を開放して結界をすべて解除していた。
(ヴィーツ!)
タモツは念でヴィーツに命じた。
(あいよぉっ!)
ヴィーツは無言のまま術式を編んだ。
「? さっきからなにを?」
刈谷がいぶかしんだ時には、すでに燃焼の術式は完成していた。
爆炎の魔導士と自らを称するヴィーツが、高温の炎を刈谷の肉体に着火させた。
「……なん、だとっ!?」
刈谷は慌てて、とっさに鎮火の術式を編んだ。足元に着火した炎は刈谷の大腿部までを焼いており、刈谷は脚を失って崩れ落ちた。
「くそっ!」
刈谷は転送門の術式を編んだ。逃走してなんらかの方法で肉体を再生させるつもりなのかもしれない。
しかし、タモツは転送門の術式を刈谷の作り出した門にかぶせて、転送門自体を転送させてしまった。
「こんなバカなっ! こんなことがっ!」
「二度も君を殺さなければならないというのは残念だよ、刈谷君」
「君の身体が完全に炭化するまで僕は燃焼の術をかけ続ける。何度でもね」
「オキザワーッ!」
「さようなら、刈谷ユウスケ。もし次に会えるなら違う形で出会いたいな」
タモツは刈谷の身体を発火させた。
刈谷はそれを術式で鎮火させたが、タモツは再び着火した。
鎮火の術式はもう成功しなかった。
刈谷ユウスケは二度目の死を迎えた。