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10-10.元連隊長、不死の王と対峙する

「あなたに殺されて以来、僕の魂はながらくこの世をさまよっていたようなのですが、ヌワージ導師が実験のために僕の魂をこの世に呼び戻しましてね。小柄でキュートだった刈谷ユウスケは、背の高い金髪男に生まれ変わったのです。これはいわゆる魔導の力とは次元が一つ違うものでしてね。いうなれば<奇跡>でしょうか」

刈谷は笑った。


「ところがこの肉体はなかなかに不自由な代物でしてね。かつて自由に行使できた魔導が二回に一回くらいしか成功しない。さらに肉体を維持するためには、定期的に人間の血を必要とするのです」

刈谷は一人で勝手に話し続けていた。

「ヌワージ導師が目指したのは女神アルカディオンの完全な復活。それを完全な形で成し遂げるために、まずは僕で実験をしてみたというわけです。魔導士パバールが切り出した魂の器、ギスリム国王の魂を温存してね」


「かつてお前が冴子さんを狙ったのもその目的か。その、魂の器というものを冴子さんから奪おうとしたんだな」

「そういうことです。この世の人の魂には格というものがありましてね。彼女の魂はアルカディオンの復活に見合うとヌワージ導師は目を付けた。そこで、僕を手駒として選んだというわけです。自衛官を辞めた時点で僕は日本人であることも辞めたとみなされたので、同胞殺しという儀式の条件を満たさなくなってしまいました。なので面倒な手段をとることになった」

「その前に他の自衛官を殺害した目的はなんだったんだ」

「あれはまあ、いわば余興ですね。さしたる意味はありませんでした」


「お前が刈谷ユウスケ本人だという事は確かに分かったよ。僕にはわからない思考回路をしている」

「そうですか? 前期教育の時にはあんなに仲良く話し合ったのに」

ククク、と刈谷は含み笑いを漏らした。


「肉体の維持に人の血液が必要という事は、後宮に生きている人を監禁しているんだな? 引き渡してもらおうか」

「いやですよ。僕にも生存の権利というものがありますから。まあ、今の状態が生きていると言えるのか自分でも謎ですが」

「ならば力づくでいくまでだが、その前に聞いておこうか。ヌワージという教祖や教団の幹部はどうした? アルカディオンの復活とやらはどうなったんだ」

「ヌワージ導師は僕が殺しました。全身の血を吸い取ってやりましたよ。後にも先にも、あんなにまずい血液を飲んだのは初めてでしたが、まあ記念にね。女神が完全な形で復活すれば、ヌワージ導師は自分の死後、記憶を保持したまま好きな肉体に生まれ変わらせてもらえると考えていたようです。僕のような不完全な形ではなくて」

「他の教団幹部も殺害したのか」

「はい、そうです。望星教団は僕が壊滅させました。そして、僕がこのライフェルで不死の王として君臨することになりました」


「野郎っ! 黙って聞いてりゃぐちゃぐちゃと」

ヴィーツが叫んだ。必死に日本語を覚えているヴィーツは、日本語で行われた会話がある程度わかったようだった。

「死にきれ、この吸血鬼野郎っ!」

ヴィーツは爆炎の術式を行使して刈谷を狙ったが、術式は不発に終わった。


「馬鹿が。この謁見の間には壁伝いに魔導封じの結界を張ってある」

刈谷は哄笑した。


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