10-04.大統領、タモツと念話する
(サエちゃんと結婚することになったよ)
カリザトのタモツからイズモのハジメのもとに念話が届いた。
(おお。ようやくか)
ハジメは特に驚きもしなかったが、喜んだ。
(なんかおまえらも色々あったけど、ようやくそこへ落ち着いたか)
(まあ、そんなとこ)
タモツは気恥ずかしそうに念を送ってきた。
(じゃあお返しにこっちも報告だ。来年の夏ごろ、カナデが母親になる)
(ええっ! それはおめでとう! サエちゃんにも知らせておかなくっちゃ)
(ああ、そうしてくれ。お前たちのところにも子供が生まれたら、また一緒につるもうぜ。今度は家族ぐるみでな)
(そうだね。その日が来るのが楽しみだ)
タモツは笑って念話を打ち切った。
「おいカナデ。タモツとサエちゃん、ようやく結婚だってよ」
「わぁっ! やったあ!」
カナデははしゃいで喜んだ。
「あのときタイチョーと二人で骨を折った甲斐がありましたねっ!」
「あー、あのときな。全くだよ」
ハジメは昔を思い出して笑った。
タモツと冴子の間が気まずくなって冴子が別れを宣言したとき、ハジメとカナデが冴子を説得して復縁するように持ち掛けたのだった。
思い返せば4年と少し前の出来事なのだが、その後に色々なことがありすぎて遠い昔のことのようにすら思えてくる。
「ギスリム国王が生きていたら良かったな。あの人とはまた友人同士として飲んでみたかった気がする」
「たくらみが多くて嫌だって言っていませんでしたか? なんだかんだ仲良しだったんですね」
「まあ、嫌いではなかったぞ。死んじまったのは凄く残念だった」
「そうですねえ。面白い方でしたよね」
カナデは笑った。
「でもサエちゃんが結婚するとなったら、シーリン女王はすごく喜んでくれるんじゃないですかねぇ」
「だな。どういうわけかサエちゃんとはすごく気が合うみたいだし」
「ふたりとも生真面目なところが似ているんじゃないかと思います」
カナデはシーリンの人となりをそれほど深く知っているわけではなかったが、すごくまじめな人だという印象を持っていた。
「自衛官同士の結婚や、トラホルン人との結婚で第二世代の日本人もそこそこ増えてきたし、新日本国もいよいよ本格的に国としての体裁を整えるべきところかな」
「まずは食糧の自給ですかねえ。田んぼの実験は順調に進んでいるみたいですから、これからは農業技官を増やしていくとか」
「そうだな。大統領としてやるべきことがまだまだあるな。課題は山積みだ」
ハジメは笑った。