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10-02.女王護衛官、女王と話す2

「それでも冴子、女には子供を産める年齢というものがあります。冴子はもう33になるというではないですか。あなたたちの元居た世界ではどうか知りませんが、トラホルンにおいてその歳で初産というのは例があまりありません」

シーリンは生真面目な口調で言った。

「女が30を過ぎて結婚も出産もしていなかったら、行く先は神殿と決まっています。そこで女官として一生を過ごすのが通例です」


「はあ……」

現世だったらさしずめ女僧侶か修道女といったところか。

「そうはおっしゃいますが、私はタモツより22も年上ですし、重荷になるのではないかという気もして……」

「そんな弱気なことでどうします! ターレン伯爵夫人など、夫の死後に30年下の元使用人に無理やり爵位を与えて結婚してしまったではないですかっ!」

「そ、そんな人もいたんですか?」

「今からおよそ200年前の歴史上の人物です。使用人の男を男爵家と養子縁組させて爵位を与え、その男と結婚して添い遂げたのです」

「そ、それはすごいですね。存じ上げませんでした」

冴子はトラホルンの歴史にはあまり詳しくないし、正直に言うと関心もあまりなかった。


「まあ、一方でトラホルンには<年下の男はいつか巣立っていく>という諺もあります。ターレン伯爵夫人も夫の浮気については寛容な心で接していたようです。タモツが他の女に惑わされても心を強く持ちなさいっ!」

シーリンは人差し指をびしっと冴子に突き付けた。


(シーリン様の中では、私がタモツと結婚して浮気されることまで決定事項になってしまっているのか……)

冴子は心中で苦笑した。

どうだろう? もしいつか自分が死を迎えるその時にタモツがそばにいてくれるのだったら、それまでの過程でタモツが他の女に気を取られることがあっても自分はそれを許せるだろうか?

それとも、実際にそうなれば身も世もなく泣き叫び、決して彼を許すことなく別れを決断するだろうか?

冴子にはよく分からなかった。


「そういえばタモツのことを好いている少女が一人いました。タモツと任務を同じくしていた女の子で、確か名前はイルマ」

「ああ、以前祝いの席で、タモツから任務の終了と身分の開放を嘆願された子の一人ですね」

シーリンは思い出したように言った。

「その少女とタモツを争うことになった時、あなたは相手に譲ってしまうのですか?」


冴子は4年前に、イルマと言い争ったときのことを思い返して思わず恥ずかしくなった。

「いいえ。渡したくないと思います……」

「ほらごらんなさい」

シーリンはなぜか勝ち誇ったようにそう言って笑った。

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