09-11.元連隊長、新たな仲間を得る
森本モトイ前大統領の葬儀と木下ハジメ大統領の就任式を終えた後、タモツは錬金術師ライラスとヴィーツ、そしてアストランを迎えにカディッサへ跳んだ。
イルマはカディールに残って魔導博物館の館員として暮らす道を選んだ。
「私は今の仕事にとてもやりがいを感じているの。だからこっちに残る」
イルマはタモツにそう言った。
「冴子によろしくね。タモツのことは彼女に譲るわ」
イルマは別れ際にいたずらっぽく笑った。
軍を除隊したヴィーツと、父親から自由に生きろと言われたアストランは、ともに錬金術師ライラスの助手としてトラホルン王宮に雇い入れられ、タモツと共に魔導戦車の開発に携わることになった。
「ヴィーツはいいとして、アストラン、君は良かったのかい? ことによるとこれは、君の故国の利益に反することになるかもしれないのに……」
「そうならないためにも志願したんだ」
アストランは笑って言った。
「もしもその魔導戦車というものが世界平和に役立つものではなく、世界を支配するような目的に使われるのだったら、僕はそれを破壊してまわるよ。破魔体質の力を開放してね」
「なるほど……。肝に銘じるよ」
タモツは納得して笑った。
「いやあ、緊張するな。転送門の術式なんて僕には使えないし、門をくぐって移動するのは初めてだ」
「転送の時にちょっと気持ちの悪い感覚がありますけど、なんということはないですよ」
タモツは魔導の眼で転送予定先に誰もいなく、何もないことを確認した後、転送門の術式を行使した。
「じゃあ、行こうか」
おっかなびっくりの錬金術師ライラスと、破魔体質を意志の力で封印したアストランの背中を押して、タモツはヴィーツと共に最後に門をくぐった。
転送された先は、王都ボルハンの西のはずれにある空き地――あの、トゥーラン館の裏手――であった。
「アストラン、王都ボルハンへようこそ。それからライラス先生とヴィーツはお帰りなさい」
「ここがトラホルンの王都ボルハンか……」
アストランは物珍しそうに周囲を見回し、遠くに見える丘の上の王宮に目を止めていた。
「うへええ。転送門というやつ、僕は苦手だこの感覚。これをまたくぐらなければならないのかー」
錬金術師ライラスは情けない声を上げた。
「大丈夫ですよ、じきに慣れますって」
ヴィーツが言った。
「だといいんだけどね……」
ちかぢかこの四人で、まずは秘密裏に古代遺跡を探索しようという話になっている。
「まずは王宮に行きましょう。シーリン女王に謁見を賜り、二人を正式に紹介します」
タモツは二人を促した。