01-17.元連隊長、魔導学院に入学する5
カディール語の水準によってクラス分けをすると言われ、新入生たちは少々ざわついた。
タモツたちは50名ほどの新入生全員が入れる講義室に移動させられ、そこで2人ずつ前に立たされて自己紹介をさせられた。
その自己紹介の話しぶりを基準に、教師たちがアーファクラスか、ヴェルトクラスかを決めるということのようだった。
イルマは当然のごとく甲種合格で、ヴィーツは乙種判定であった。
タモツはというと、特に危なげなく甲種で合格した。
前世では特にスピーキングとヒアリングが苦手であったはずのタモツは、今回の人生では不思議と異国の言葉をよく聞き取れたし、発音の上達も速かった。やはり肉体年齢が違うと脳の柔らかさも違うのかもしれない、とタモツは思った。
「ちっ。魔法の勉強の前にカディール語の特訓かよ」
3年間イルマを教師に学んだはずのヴィーツだったが、特にカディール語で自己紹介をするときにしどろもどろになってしまって悪い判定が付いたようだ。
「まあ、そう気に病むなよ。魔導の才能があるのは間違いないんだからすぐに追いつくさ」
「まあなー」
単純なヴィーツはタモツの言葉に気をよくしてニヤニヤした。
入学式やクラス分けなどが済んだ後、タモツたちは自分たちの部屋に戻ってくつろいでいた。
「明日から早速学院での勉強や訓練が始まるんだな。自衛隊に入隊したときのことを思い出すよ」
「15歳から自衛隊の学校に入ったって前に言っていたな。訓練の開始がずいぶん遅いんだな」
「僕たちのいた日本では、将来いろんな職業を選べるように職業訓練とは別の学問を幅広く勉強していたんだ」
「話を聞くたびに信じられないよ。日本人ってすごく恵まれているんだな。天国みたいなところじゃないか」
「そうだね。僕もこの世界に来てから初めてそのありがたみに気づかされた気がする」
「噂の新日本国っていうのは、別世界にある本物の日本みたいな国を目指してるんだろ? 俺も日本人になってそこに住みたいよ」
「移民希望者をどうするのかっていうことまでは、僕にはわからないな」
「大統領のハジメはタモツの友達なんだろ? お前から頼んでみてくれないか?」
「うーん……。そうだね、今度会うことがあったらきいてみるよ」
この異世界に飛ばされてきた日本人たちのための独立国、というのが新日本共和国のコンセプトであるはずだが、ハジメや森本モトイ、他の官僚たちは移民政策についてはどういう考えを持っているのだろう?
タモツは今まであまりそういうことを考えてこなかったことにいまさら気が付いていた。