08-20.元連隊長、仲間たちに会う
数日後、タモツはヴィーツとイルマに会うためにカディッサに跳んでいた。
錬金術師ライラスに労を取ってもらいヴィーツやイルマに会うために場を設けてもらったのである。
二人と合う場所は、アストラン行きつけの例の料理店であった。
「タモツ! ひさしぶりだな!」
「タモツ! また会えて嬉しいっ!」
タモツが店の入り口をくぐったときには、すでにヴィーツとイルマは店内にいて待っていてくれた。
奥の方には錬金術師ライラスの姿も見える。学院には退職届が受理されて、もう後任の講師も決まり今は引き継ぎの最中であるという。
「やあ、ヴィーツ、イルマ」
タモツは久しぶりに見る仲間たちに顔をほころばせた。
「今日は君たち二人に嬉しい知らせを持ってきたんだ」
店の奥の席に四人で着座してから、タモツは早速話を切り出した。
「嬉しい知らせ?」
「なにかしら? トラホルンから特別俸給でも出た?」
「まあそんなところ。シーリン女王陛下は戴冠の祝いに免じて、君たちの身柄を自由にしてくれると言ってくれたんだ」
「え? つまりそれって?」
ヴィーツはすぐに話が飲み込めなかったようだが、イルマは静かに泣き出してしまった。
「私たち、これからの人生を好きに選べるっていうことよ」
「そういうことだねイルマ。ギスリム国王から与えられていた任務はこれで終わりとなる。君たちが望むならカディールで今の仕事を続けて、トラホルンの間者ということはもうしなくてもいい。トラホルンに戻りたいなら戻ってもいい。君たちがギスリム国王に負っていたあらゆるもの――義務も、借金も、任務も――すべてはもうゼロになった」
「私、とうとう自由になったのね。任務によって自分の身柄を買い戻したんだ……」
泣き続けるイルマに、錬金術師ライラスがそっとハンカチを差し出した。以前は身なりに気を遣わないことで知られていた講師だったが、イルマに接触されてからは清潔を心掛けているようだった。
「あ、いや、俺はそんなこと言われてもどうしたらいいのかわかんねえよ」
ヴィーツはかえって戸惑ったようだった。
「王様に褒められたいっていう一心でやってきて、なのにギスリム国王も死んじゃって、あとは自由にやっていいって言われてもなあ」
「ヴィーツは将来の希望とかは特にないのかい?」
「俺は……、かなうなら日本人になりたい。異世界自衛隊に入りたいよ」
「それはよく言っていたね。もしよかったらだけど、トラホルンに帰還してライラス先生の助手として異世界自衛隊で働かないかい? 現状では日本人と結婚した配偶者については新日本国民として受け入れているから、誰か女性隊員を奥さんに捕まえたら可能性は無くもないんだけど……」
「!! 行くっ!」
ヴィーツは思わず身を乗り出した。