08-14.元連隊長、協力を仰ぐ2
アストランはしばらく目をつぶって、何事かを考えていた。それから目を開いて言った。
「タモツ、僕は君自身についてはとても信頼している。破魔体質のために僕はジッドでは死ななかったが、君は僕を気遣って、命を救うために危険を冒してくれた。君の勇気と人柄、そして判断力を信頼しているんだ」
アストランは続けた。
「でも、その遺跡が浮遊城だったとして、その運用は君の一存で決まるものではないのだろう? よしんば君にその決定権があったとしても、遠い未来については分からない。君の死後に誰かがそれを悪用するかもしれない」
「そうだね、その通りだアストラン」
断られる流れだな、と思ってタモツはガッカリしたがそれも仕方あるまいと思った。
「だけどタモツ、その浮遊城が平和運用されて、大陸の人々の役に立つという未来も僕は考えてみた」
「!?」
「兵器として作られたからと言って、兵器として運用しなければならないわけじゃないだろう? 例えば交易のために遠方の貨物を空から運ぶとか、そんな使い方だってあるんじゃないか」
「アストラン……。君は、すごいな」
タモツは浮遊城の平和利用について、その可能性を広げて考えることはしてこなかった。
強力な軍備として周辺国を威嚇して、その結果戦争を回避するという抑止力としての運用にのみ考えがいっていた。
今回のバルゴサの飢饉を救うための災害派遣もそうだったが、食糧などの救援物資を運搬することにも使える。
あるいは火山の噴火や津波などに襲われた地域の人々を救助するためにだって使えるかもしれない。
タモツがその思い付きについて述べると、アストランとライラスもうなずいた。
「浮遊城の運用についてはあくまで平和利用を前提としたものとして、僕が大統領に提言して推し進める。協力してくれるかい、アストラン?」
「わかった。君を信じるよタモツ。それに、個人的にも古代遺跡には興味をひかれるしね」
魔導士としては劣等生だったアストランだが、学生としては秀才であった。古代史への興味と知識も高いようだった。
「まずは、僕たち三人だけで浮遊城の内部を探索してみることにしないか? もしそれが危険なものだったら、他の誰にも知らせずに浮遊城復活の考えは凍結させるべきだと思う」
錬金術師ライラスが提案した。タモツとアストランも同意した。
「地面に埋没している部分に、投下されていない爆槍なんかがあったら恐ろしいですからね」
「そんなのを見つけたら、僕が全力を開放して機能を停止させるさ」
アストランがそう言って笑った。