08-13.元連隊長、協力を仰ぐ
夕方にはライラスはその日の受け持ちの授業を終え、タモツの待つ中庭へとやってきた。
「面と向かって会うのはお久しぶりになりますね、ライラス先生」
「また少し背が伸びたかい、タモツ」
ライラスに連れられて歩いて行った先は、カディッサを去る間際にアストランと入ったあの料理店だった。
「ここでちょくちょくアストランとは会うようになったんだ。アストランの学生時代にはそれほど接点がなかったんだけど、タモツの話をしているうちに気が合ってね……ああ、これは前にも念話で話したっけ」
ライラスは店の入り口をくぐり中へ入っていった。
「やあ、アストラン。今日はびっくりする客人を連れてきたぞ!」
いつもより陽気なライラスが、そう言ってタモツを店の中に手招きした。
「え? タモツ!?」
店内でライラスを待っていたアストランが、タモツの姿を認めて駆け寄ってきた。
「どうしてここに?」
「ライラス先生と君が親しくなったと聞いて、僕も混ぜてもらおうと思ってね」
タモツはにこにこして言った。
「それに、君にお願いしたいことがあって来たんだ」
「僕にお願い事? ああ、なんでも言ってくれ。以前にも言ったが君には恩義がある。僕にできることなら何でもするよ」
アストランはそう言って、店の奥の席にタモツたちを促した。
「ここからはカディール語ではなくトラホルン語で話そう。店の人にも聞かれたくないことなんだ」
錬金術師ライラスがそう言った。
「わかりました。なんですか、話というのは?」
アストランはトラホルン語に切り替えてライラスにたずねた。
タモツは<竜殺しのハジメ>たちが、新日本国の領土である森林地帯の西側で古代イムル王国時代のものと思われる遺跡を発見していたことを話し始めた。それはおそらく伝説にうたわれる浮遊城が墜落したもので、その内部を探索するためには侵入者を排除するシステムを無力化する必要があるということを伝えた。
「信じられない話だけど、僕に何をさせたいのかは見えたよ。僕の破魔体質を使ってその侵入者排除の装置を停止させるんだね」
「もし浮遊城が過去と同じように動かせるのだったら、これは強力な兵器としても使えるものになる。カディール人である君が、新日本国に協力することについて、気が進まないようだったら言ってくれ」
タモツはアストランをまっすぐ見つめた。
「そうだな、少しだけ考えさせてくれ」
アストランはそう言って目をつぶった。