08-04.元連隊長、魔導戦車を造る4
タモツは魔晶石からエンジンへの魔素の流れるルートを作成し、その終点に爆発の術式を込めた。
「魔晶石、動力いきますっ!」
そして、魔導の連続発動を稼働させた。
タモツの合図とともに61式戦車のエンジンは稼働をはじめ、ガタガタと荒々しい振動が車体を包み込んだ。
「エンジン動きましたーっ! どうしますー?」
操縦席に座っていた小柄な元戦車乗りの隊員がタモツに向かって叫んだ。
「3メートル前進っ!」
「3メートル前進了解っ! キュウマルと勝手が違うからビタリとはいかないかもしれないですけどーっ!」
タモツが叫び返し、操縦席の隊員がそれへまた叫び返した。
61式戦車は一度後方にノックバックするような動きを見せ、それからキャタピラがゆっくりとキュラキュラ音を立てて回り始めた。
こいつを建物の中で動かせるように、この建物の下は土がむき出しになっていた。
61式戦車のキャタピラは土をかきあげて回転し、車体は人の身長二人分くらい前進してそこで止まった。
「いいぞっ! ポンコツっ!」
「動いたぞ、この骨董品!」
整備に携わった隊員と予備の操縦手が見守る中、61式戦車の駆動実験はひとまず成功を収めた。
「あとはこれと同じ原理で、キューマルやナナヨン改を魔導戦車に改造していくだけだな」
魔晶石に再び触れて魔導の発動を停止させ、タモツは戦車のエンジンを止めた。
「みんな今日まで本当にご苦労様! 我が魔導実験小隊の最初の任務は小隊に集まってくれたみんなのおかげで成功を収めました!」
11歳の小隊長、沖沢タモツ2等陸尉はロクイチの車体の上に登って小隊の面々を見回した。
「このプロジェクトの発案者であったギスリム国王は亡くなってしまいましたが、将来的な魔導戦車部隊の発足を見越した戦車改造実験はまだ始まったばかりです。魔晶石駆動の戦車があれば我が異世界自衛隊はこの世界中のどの軍隊にも引けを取らない強力な防衛力を有することができるでしょう」
タモツは実験小隊の隊員たち一人一人の顔を見て続けた。
「いずれ異世界自衛隊を、かつてのアメリカのような世界の警察として機能させて世界に平和をもたらすというのが森本大統領の理念であると、方面総監を通じて伺っています。魔導戦車部隊が設立されれば、いずれその理想は成就すると思います。魔導実験小隊の皆さんのより一層の尽力に期待しています!」
タモツのスピーチに、小隊の面々は熱烈な拍手で応えた。