01-14.元連隊長、魔導学院に入学する2
学院の新入学生は20人ほどいるということだった。
タモツとヴィーツは男子寄宿舎に通されて、女子寄宿舎へ向かうイルマとは別れた。
案内をしてくれた上級生は現世なら中学生くらいに見える少年で、アストランと名前を名乗った。
「よろしく、ヴィーツ、タモツ」
アストランはタモツたちよりずいぶん年上だったが威張るようなこともなく、穏やかで感じのいい少年だった。
黒髪に黒い瞳、肌の色はやや浅黒く、カディールとバルゴサの混血児であるように見えた。
「それにしてもタモツ、君は変わった顔つきをしているね。南方大陸から来た人かい?」
「ニッポン人です。ここからは別世界のニッポン、という国から転移されてきたんです」
「別世界?」
「馬を使っても船を使ってもたどり着くことができない別世界です。トラホルンに召喚されてきたんです」
「ジエイタイ! そういえば聞いたことがあった。<竜殺しのハジメ>もその一人だとか」
「そうです。僕はまあ……その2世といったところです」
転生の話をすると話がこじれるかと思ったので、タモツは省略した。
「ヴィーツはトラホルンとカディールの混血なのかい?」
「そうっす。自分ではトラホルン人だと思ってますけど」
「そうなんだ。僕はカディールとバルゴサの混血だけど、自分のことはカディール人だと思っているよ」
アストランはヴィーツに微笑んだ後、
「混血だと何かと肩身が狭くてね。子供のころはいじめられたりもした」
「ああ、わかります」
「そうなんですね……」
と、タモツはうなずいた。
「ニッポンでは、混血の子はハーフって呼ばれてもてはやされたりしていましたよ。特にかっこいい男子とか美人の女子が人前に出る仕事をしていて。あ、いや、これは母から聞いた話ですけど」
「そんな世界があるのかい? 不思議な国もあるものだね」
「俺はつくづくニッポンに生まれたかったよ」
アストランは興味深そうに言い、ヴィーツはいつものように嘆いてみせた。
「さあ、ここが君たちの部屋だ」
示された部屋はどこか自衛隊の隊舎を思わせる簡素な部屋で、ドアを開けて左右には木製の二段ベッドが一つずつ壁際にならんでいた。ベッドのわきには一人一つずつ、衣装を入れる長細いロッカーもしつらえらえている。
「四人部屋だけど、他に誰かはいるかはまだ未定らしい。ここ数年は、少し入学希望者が少なくなっていてね」
アストランは軽く手を振って去っていった。タモツとヴィーツはその背中に向かって礼を言い、それから荷物を片付け始めた。