07-19.元特務隊長、災害派遣隊を撤収する
預かった玉璽をサルヴァ王女に渡すためとギスリム国王の葬儀に参加するために、ハジメは休暇を取っていた。
だが、いつまでも王都ボルハンにとどまっているわけにもいかなかった。
プロジェクトの提唱者であるギスリム国王が急死ししても、バルゴサへの食糧援助という災害派遣は継続されることに決まっていた。
バルゴサの王位継承権を主張するサルヴァはギスリムの親衛隊をそのまま受け継ぎ、魔導防御のための白魔導士も伴ってバルゴサ入りすることを表明した。
むろん、婚約者である岡崎チヒロも一緒である。
シーリンとサルヴァは第二次災害派遣隊の派遣も決めた。休暇を終える前に早馬を飛ばしてヌーン・バルグまでたどり着いたハジメは、到着した途端に、食糧配布を終えた隊をたたんでトラホルンまで帰還することになった。
現地での異世界自衛隊の人気は高まり、先の戦争の遺恨を抱えるものは、少なくとも表面上にはいないように見えた。
ハジメが率いる第5普通科連隊は、当初は臨時連隊と呼称されていたが正式な部隊となった。
というのも、戦争に備えるための臨時駐屯地として考えられていたバイアランの横に、一台の90式戦車が出現したからだった。
つまりこれは、今後とも異世界自衛隊のための武器装備が、この地点に転送されてくるであろうことを意味していた。
建設された当初はあくまで臨時駐屯地という扱いであったバイアランが正式に第五駐屯地となり、そのため第5普通科連隊もその守備隊として継続運用されることになった、という運びであった。
ハジメたち第5普通科連隊からの派遣隊がバイアランに下がるのと入れ替わりに、カリザトの第3普通科連隊から第二次派遣隊がイサを経由してバルゴサ入りした。
第3普通科連隊はバイアランの第5普通科連隊のバックアップとして人員を増強されていたが通常編成に戻り、増強のために各駐屯地から集められていた人員はトラザム、イェルベ、イムルダールの各駐屯地に帰って行った。
トラホルン国内、およびイムルダールの5個駐屯地はいずれも平時の通常運転に戻り、第3普通科連隊から災害派遣団が出ている以外は戦争開始の数年前に近い状態に戻った。
トラホルン国内の魔獣や合成獣などはあらかた駆逐してしまったため、今では異世界自衛隊の主な任務は害獣となった鹿やイノシシなどを駆除することだったりするほどに平和だった。
「こうなったらこうなったで、トラホルン国民の税によりかかって異世界自衛隊が維持されているのって、どうなの? ってカンジだよなあ」
ハジメは副官の持田に向かってそう言った。