07-18.元特務隊長、ドラゴン飯店に集まる6
「……」
タモツは何かを考えこむように黙り込んでいた。
「どうした、タモツ?」
冴子がタモツの方を向いてたずねた。
「もしかしてなんだけど、そのセキュリティ? を突破できるかもしれない人を一人知っている」
「ええっ?」
金井が声を上げた。双葉は無言でタモツのほうを見つめた。
「ほんとかよ、タモツ」
「破魔体質、っていう特殊体質に生まれついたカディール人の男の子なんだけど、色々あって親しくなったんだ」
「破魔体質?」
「魔法を破る体質、だよ。身体に触れたあらゆる魔導を無効化してしまう体質の持ち主なんだ」
「それは、魔導によって発生した炎とかを手でかき消すこともできるのか?」
「できるんだ、サエちゃん。魔導の術式を阻害するだけではなくて、魔導によって生じたあらゆるものを消滅させる。実際に僕が小さな火球をぶつけて実験したことがある」
「まじかよ」
と、ハジメは言った。
「そいつがもし魔晶石に触れたら込められた力が発生しないだけじゃなくて、壊れちまうんじゃねえのか? つまりさ、セキュリティを破ったはいいけど浮遊城自体が動かなくなっちまうんじゃねえの?」
「どうなんだろうか。魔導を打ち破る力の範囲を訓練でコントロールできるなら、こちらの都合よくセキュリティだけを解除してもらって浮遊城を再起動させることができるかもしれないけど……」
友人を道具のように便利に使うようで、タモツはその思い付きにはいささかためらいもあった。
「ところでそもそもハジメ、浮遊城を再起動させたらどうしようというのだ?」
「そいつはもちろん、俺が自分の城にするんだよ!」
「新日本国から買い取るんですかぁ?」
「ハジメ、君の夢は新日本国初代大統領になったことで果たされたものだと思っていたけど……」
「いいや、タモツ。俺は王を目指すぜ! 日本人だけじゃなく、さまざまな民族が共生できる理想の国をな」
金井と双葉はその話を初めて聞いたので、二人ともぎょっとしてハジメの方を見ていた。
「地上に領土を持たぬ、空に浮かぶ国家か……」
冴子はしばらくそれを想像していたようだった。
「ふむ。思い付きが突飛だが、ハジメらしいと言えばハジメらしい」
「空飛ぶお城では食料を自給できませんけど、その辺はどうするんですぅ?」
「交易国家として大陸中を飛び回るんだよ!」
ハジメは力強く言った。
「空飛ぶお城のお妃さまですかぁ。悪くはないですねぇ」
カナデはにんまりした。