07-17.元特務隊長、ドラゴン飯店に集まる5
「森林地帯と言えば、あそこで見つけた遺跡の話、タモツに詳しくしてなかったよな?」
ハジメはふと思い出して言った。
「え? ああ、うん。それを見つけて帰ってきたのって、サエちゃんが誘拐されたときじゃなかった? 後で他の人に聞いたよ」
「ああ、確かそうだ。それで結局お前たちに話す機会が無いままだったんだよ」
ハジメはタモツに向き直った。
「浮遊城、っていうのを聞いたことがあるか?」
「うん。古代の魔法王国イムルが開発した空飛ぶ城塞だね。爆槍をいくつも搭載してバルグ王国の上空を目指していたところ、バルグの飛竜軍団によって撃墜されたという」
「そうだ。その浮遊城らしきものを俺たちは見つけたんだ」
「聞いているよ。聞いたときは半信半疑だったけどね」
「これはマモさんからの受け売りだが、古代の文献によれば撃墜された浮遊城からは爆槍がすべて落下してイムルダールの北にある荒野に落下した。それで、あの辺一帯は永久不毛の土地に変わったとされている」
ハジメは言った。
「爆槍の影響下にある土地と、影響を受けていない土地とで不自然なくらいはっきりと境界線ができているのは知っての通りだ。荒野が終わったと思ったらそこからいきなり森林なんだからな」
「たしかに」
自身もイムルダールに赴任したことがあるタモツはうなずいた。
「で、浮遊城は空の上から南に向かって墜落して、あの森林地帯の奥に落下した。俺たちが発見したのがそれで間違いないと思う。俺たちは危険を避けるために発見だけして内部の探索はしなかった。俺が大統領時代にギスリム国王が白魔導士団を派遣して内部を探索したいと申し出てきたので、俺は許可した。転送門を使って浮遊城を見に行ったらしい」
「それは初耳だぞハジメ」
「え。カナデちゃんもなんですけどぉ」
冴子とカナデが言った。カナデはちょっと不満そうだった。
「まあ聞けよ。別に隠していたとかじゃねえんだけどさ」
ハジメはカナデの頭をつかんで髪の毛をぐしゃぐしゃにしながら言った。
「結論を言うと、魔導の結界が貼られていて内部に入れなかったんだ。そして、浮遊城の中から女の声が聞こえてきて白魔導士たちはビビっちまったらしい」
「女の声?」
「機械の合成音声みたいなものじゃねえかと俺は思っている。古代イムル語らしいんだが、カディール古語に詳しいものがいたらわかるかもしれねえ。が、その時の連中にはいなくて詳細は分からずじまいだ」
「中に入りたい人は入場券を見せてください! とかじゃないんですかぁ?」
カナデがちょっとはしゃいでそう言った。
「案外そうかもしれないですね。ゲートを通過する資格があるなら証明して見せろとか」
冴子が真面目な顔をしていった。