07-14.元特務隊長、ドラゴン飯店に集まる2
「戦車のことは私はなんだか分からないが、魔晶石から力を取ってエンジン内部で爆発を起こし続ければ、化石燃料が無くても戦車が動き続けることができるのだな」
冴子がハジメに確認した。
「そういうことになるね。ただ、問題がもう一つあるんだよねえ」
「どんなです?」
カナデが口をはさんだ。
「エンジン始動とエンジン停止を行うには魔導士じゃないとダメだってことなんだ。少なくとも車長だけは魔導士としての訓練を受けていないとならないんだけど、車長の負傷や緊急停止なども考えたら戦車隊員全員が初歩の魔導士でなくてはならない。魔導の回路を開くための訓練を僕たちはカディールに行く前に積んだけど、ヴィーツっていう天才児で1年、僕は3年かかった」
「タモツで3年かかったなら、人によっては5年かかるかもしれないのか」
冴子は難しい顔をして言った。
「いっそエンジンをずっとつけっぱなしにしておくとか?」
「魔晶石内部のエネルギーがすぐに切れてしまうよ。そうしたら再充填しなければならないから、結局それに魔導士が必要になる」
「魔導の力で戦車が動いたら無敵だと思ったが、そういうわけにもいかねえのか」
「そううまくは行きそうにないね。魔導戦車を実戦に投入するためのバックアップには、整備兵のほかに魔導兵が必要になってくる」
「タモッつあんは自衛隊に戻って魔導部隊を作るつもりなんですかぁ?」
「そうだね。魔導訓練隊の設立を提案してみるよ」
「トラホルン側は、自衛隊が魔導の力を握り強力になることについては危険視していないのか?」
「危険だと主張する、その急先鋒がパバール導士だったんだよね。推し進めていたのがギスリム国王」
タモツはカナデとハジメを見て言った。
「シーリン様は基本的には何についても、さしあたっては父王陛下の路線を踏襲するというお考えだ」
注文した料理を双葉が運んできて、現世風のうまそうな品の数々が四人のテーブルに並べられた。
「つまりは、異世界自衛隊が魔導を導入するということについても反対なさらないだろう」
「パバール導士があのような事件を起こしたせいで、逆に旧守派の旗色が悪くなった格好だね」
「それなんだがよぉ」
ハジメは天津丼を食べる合間に、ふと思い出した。
「パバールのおっさん、タモツが調査していたナントカいう宗教団体に洗脳されていたっていう線はねえか?」
「望星教団?」
「そう、それだ。刈谷の潜伏先として一番怪しいグループだろ?」
ハジメは疑いを込めて言った。