07-12.元特務隊長、葬列に参加する2
歴代王族が眠る王家の墓地に、ギスリムの棺が埋められた。
列席した人々が鉄のスコップでひとすくいずつ土を棺の上にかぶせていき、最後に王家の墓守をしている役人が土をならして埋葬が終えられた。墓石は現在制作中のものを、のちにすえられるはずだった。
喪主にあたるシーリンとサルヴァが列席した人々の前に立ち、シーリンが代表して話し始めた。
父王の葬儀に参列してくれたことに感謝の意を述べたのち、シーリンはトラホルン王国の王権を自分が引き継ぎ、女王として統治していくという意向を述べた。
この葬儀の日までにトラホルンの首脳陣が話し合った結果、シーリンを次期国王として押し立てることが決定していたらしい。
ハジメは他の人々と共に拍手をしながら、冴子の方を振り返った。
「シーリン王女からスカウトされたらトラホルン人になるつもりかい? サエちゃんよ」
「ああ、実はもうされているのだ。女王づきの護衛官として身近に仕えてくれとな。その話、受けようと思っている」
「そうか。サエちゃんも異世界自衛隊辞めちゃうのか。そいつはちっと寂しくなるな」
「トラホルンに仕えるとなるとそうなるな。まあ、トラホルンと新日本国は一体のようなものだ。国籍などという概念はこの世界には無いわけだし」
「仕えるべき主君を見つけたんだね、サエちゃん」
タモツが横から口をはさんだ。
「そうだな。あの方は素直でまっすぐなお方だ。おそばに仕えて守って差し上げたい」
「女王警護官、クイーンガードですか。サエちゃんかっこいいです!」
カナデも冴子の進路選択を祝福した。
葬列は散開した。時期女王になることを宣告したシーリンと、バルゴサの時期女王になることを表明しているサルヴァの周りには警護の兵たちが20人ほど群がっていた。
「私はシーリン様と一緒に王宮へ戻る。夕過ぎにドラゴン飯店で落ち合って、久しぶりに四人で話さないか?」
別れ際に冴子が言った。
「いいねえ」
とハジメが同意して、タモツがうなずき、カナデも
「さんせーい!」
と子供のように喜んだ。
「サエちゃんもトラホルン人になるのかあ。出会ったときはザ・自衛官って感じだったのになあ」
ギスリムという友を失ってからはいっそうのことだったが、この頃のハジメは昔のことを思い出してしんみりすることが多くなっている。
俺も歳をとったってことなのかな、とハジメは少し自嘲した。
「そうだねえ。確かあの時11歳だったはずだから、今の僕とちょうど同じ年だったんだなあ」
タモツも昔のことを思い出したようだった。