07-10.元特務隊長、友たちと再会する
ギスリムの棺が玉座の間に安置されたあと、ハジメは岡崎やロトム、冴子と言葉を交わす時間を持てた。
王宮の入り口から玉座の間に向かう途中のホールのようなところの一角であった。
「国王のご遺体の防腐処置はどうなっているのだ?」
と、冴子がふと思い立ったようにハジメに尋ねた。
「随伴していた白魔導士が定期的に魔導で遺体を保護している。まあ、それの繰り返しで永久保存ってわけにはいかねえみたいだけど」
「そうか」
「新日本国の建国を陰で支えて強力な同盟国として成立させ、バルゴサの侵略を防いだばかりかバルゴサの王権まで持たれた。間違いなくトラホルン500余年の中でもっとも偉大な王となられたお方だ。ご遺体を永久保存しても良いくらいだと思うが」
ボルハンのロトムがそう言ったが、
「どうかねえ。俺たちがいた世界ではスターリンっていう国家指導者の遺体にそれをやっていた気がするけど、神格化しちゃうみたいなのはどうなんだろうか」
ハジメはやんわりと否定した。
岡崎はなにも話さず、ただ物思いにふけっているようだった。
そこへ、タモツとカナデが現れた。馬を飛ばしてカリザト駐屯地から駆けつけてきたらしい。
「ハジメ! 四年ぶりだな」
「おお、タモツじゃないか。ずいぶんと大きくなったな」
「親戚のオジサンみたいなことを言うなよ」
「お帰りなさいあなた」
「あなたとかいうなよ、なんだか気味が悪い。こんな場だから自重しろよカナデ」
カナデには場の空気を読まずにふざける悪癖があったので、ハジメはあらかじめくぎを刺した。
「はあい」
カナデはそう言って少しむくれてみせた。
「葬儀の段取りはどうなっているんだ?」
と、ハジメは岡崎にたずねた。
「あ、はい。玉座の間で弔問者の参列を受けた後、魔導による防腐処置をし直して、ボルハン市内を葬列し、イルハンの丘のふもとにある王族の墓地に葬られることになります」
「喪主はシーリン王女か」
「そうですね。サルヴァ王女と連名で。ロトムと俺が横に付き従います」
「お前たちも大変なことになったな。女王の配偶者として国を治めるのか」
ハジメは岡崎とロトムの顔を見て言った。
「俺なんかたったの四年だったけど国家元首ってやつはなかなかくたびれたよ。お前たちはずっとだもんな」
「どういう難題が待っていようと、俺はシーリン様をかたわらでお支えするのみだ」
ロトムは力強く答えた。
「あー……。俺は、まあ、今のところ全く自信ないですね、正直なところ」
岡崎は情けないことを言った。