06-18.元連隊長、国王らと再会する
念話であらかじめ帰還の報告をしていたため、王宮では王自らがタモツを出迎えてくれていた。
「沖沢タモツは、魔導学院の訓練科目を全て終了し、帰還いたしました!」
王宮の入り口で、タモツはギスリム国王に向かって元気よく報告した。
「うむ。ごくろうであった。先の爆槍撃退の際にもよく力を尽くしてくれたな」
国王はタモツをねぎらってから、後ろを振り返った。
「どうした冴子! なにを後ろに隠れておるのだ」
「か、隠れてなどおりませぬ!」
別れてから4年が経過して、33歳になった戸田冴子がそこにいた。
「サエちゃんっ!」
タモツは喜びの声を上げて冴子に駆け寄った。
「タモツ……。よく無事で帰ったな」
冴子は少しもじもじしながら、11歳になったタモツに抱擁されるがままになっていた。
「こうして見ると、甘えっこの息子と母親のようだな」
ギスリム国王は冷やかすようにそう言って笑った。
それを耳にした冴子が、ちょっと身を固くしたのにタモツは気が付いた。
そして、二人に年齢差があるということを冴子がすごく気にしていたらしいことを今更ながらに思い出した。
明敏なギスリム王も何かを感じ取ったらしく、ちょっとごまかすように続けた。
「しかし、美しい年上の女と愛し合うというのには、若い時代には余も憧れたものだ。うらやましいぞタモツよ」
「また決闘を申し込まれても、もう受けませんよギスリム陛下!」
タモツは笑って言った。
「魔導学院の授業で学んだ中級以上の魔導を他者に伝授してはならない、というのが制約の一つであったな」
不意に、ギスリム国王が切り出した。
「はい、そうです。逆に言えば僕自身が学び取った、あるいは学院の授業とは別に学んだ技術については制約の範囲外にあると解釈できます」
「具体的にはなにがある?」
「大きなものでは魔晶石の生成と転送門の技術です。念話は学院で学ぶ前にイルドゥ老師の下で習得していますが、これはどうなのでしょう?」
「念話については学ぶものに資質さえあれば灰魔導士でも教えることができる。タモツが教師をすることはなかろう」
「これらの技術をトラホルンに渡した後、私は士官待遇で異世界自衛隊に戻るというのが当初の取り決めでしたが、それでよろしいのでしょうか?」
「ああ。森本モトイ大統領や方面との話し合いはなされている。まずは優先的に戦車を魔晶石駆動に改造するという課題に取り組んでほしい」
ギスリム国王は言った。