06-13.元連隊長、完成させる
それからさらに半年が経過し、タモツ、イルマ、ヴィーツの三人はほぼそろって学院のカリキュラムを全て終えてしまった。
そして、魔晶石の研究に関しては目標であった「人の頭蓋骨サイズの魔晶石」を完成させることができた。
「古代から伝わるものに比べると性能は落ちるだろうけれど、これでおそらく戦車を動かすことができるんじゃないかな」
タモツはその出来に満足した。
「魔晶石を生成しては融合して、生成しては融合して……。くたびれたよ」
ヴィーツはそう言って嘆いた。
「魔晶石から力を引き出して動力として使う実験も成功したしね」
イルマが言った。
廃村の風車小屋に出かけていき、粉ひきの臼を魔晶石の力で回すという実験を、すでに彼らは終えていた。
「戦車の動力は石臼よりもっとはるかに複雑だけど、魔素の流れを作ってやることは可能なはずだ」
タモツは確信していた。
「あの大きな鉄の塊が動き出すのね。敵に対しては強力な威嚇になると思うわ」
「俺はその戦車っていうやつを見たことねーんだよなあ」
孤児としてボルハンの市中で育ったヴィーツは興味深そうにタモツのほうを見た。
「小山みたいにでっかい鉄の塊が迫ってきたらそりゃ怖いだろうけど、それ、他になんかあんの?」
「砲弾や機銃といった武器があるよ。大きな鉄の球を飛ばしたり、小さな鉄の球を飛ばしたりできる。それで敵の武器を壊したり、人を殺したりできるんだ」
「ひえーっ」
「異世界自衛隊が保有している戦車は今まで動力になる燃える水が足りなくて、ほとんど放置されてさび付いているけど、保存状態の良いものを整備して魔晶石駆動に改造すれば今回のように戦争を仕掛けられても十分に対抗できる。噂の竜騎兵なんか目じゃないと思うよ」
「戦車のほかには使えるものはないの?」
「大勢の人間や大量の荷物を運べるトラック、少人数で素早く移動できるジープ、そんなものもあるね。まだ朽ち果てていない車両があればそれらも魔晶石駆動に改造してみたいな」
「僕としては複雑な気分だが……。故国トラホルンに協力するのはやぶさかではないし、魔晶石の技術は僕が独自に開発したものだったからこの伝授は制約に違反してはいない。だが、トラホルンがあまりに強力になりすぎるようだ」
「トラホルンっていうより、異世界自衛隊が、じゃなくてですか?」
錬金術師ライラスの述懐に、ヴィーツが口をさしはさんだ。
「同じことよ。新日本共和国はトラホルン王国の属国的立場ですもの」
イルマは言った。
「専守防衛、という理念を掲げているから侵略戦争には加担しないと信じているけれども……」
タモツはやや自信なさそうに言った。
「今回の戦いは、ギスリム国王によってうまく利用されてしまった感じはあるな」