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06-06.元特務隊長、戦争の終結を見る4

金色の甲冑を身に着けたバルゴサの武将たちは次々に立ち上がった。

それを確認した後、ギスリムは胸元から小さな皮袋を取り出し、そこから<玉璽ぎょくじ>を出して、一同に見せた。


「これが何か、そなたらにはわかるな?」

「こ、これは――!」

「竜玉石の玉璽!!」

「言うまでもないが、これは本物だ」

そう言って、ギスリムは再び玉璽を胸元にしまい込んだ。


「我が母の名はイスリン。アガシャーと王位継承を争ったイシャー王子の双子の妹だ。35年前にアガシャーが企てた計略によって我が伯父イシャー王子は亡くなり、我が母イスリン王女は玉璽を携えたままトラホルンへと落ちのびた」

ギスリムは一言一言、噛んで含めるようにゆっくりと武将たちに言った。

「踊り子と身分を偽り、ラーナと名を変えて小さな村に潜んでおったのだ。ところが偶然にもトラホルン王に見初められ、身分を隠したまま王の側女そばめとなった。生れたのがこの余、ギスリム・ハールバルムだ」


バルゴサの武将たちの間に衝撃が走った。

バルゴサ王家の血を引き、玉璽を手にしているとなると正統なバルゴサの王位継承権を持つと主張しても十分に通る。


「余は幼少のみぎりから母の縁者たちに、いつの日かバルゴサの王位を取り戻すという夢を吹き込まれて育った。本当にそんなことができるのか半信半疑ながら、バルゴサという国に対する関心を失ったことは一度もなかった。だからこうして、バルゴサ語も流暢に話すことができる。まあ、発音に癖はあるかもしれぬがな」

ギスリムとしては笑うところとして言ったつもりなのだろうが、バルゴサの武将たちは何も言えないまま立ち尽くしていた。


(まあ、そりゃ衝撃だよな。さっきまで敵と思って戦っていた相手が、王位継承権を主張してきたんだから)

後ろに立って黙って成り行きを見守っていたハジメはそう思った。

(で、この人は一体どうするつもりなんだ? バルゴサの王族相手に継承権争いを仕掛けようってのか?)


「余は、バルゴサとトラホルンの友邦を夢見ておる。我が肉体に溶け合って宿るバルゴサとトラホルンの血のように、争いあわず互いに助け合って両国が発展できる未来を望んでおるのだ」

ギスリムは武将たちを見回して力強く言った。

「アガシャーの治世よりも、必ず良い政治を行うと約束する。ここにいる将兵たちに頭を下げて頼む。余の後ろ盾となってはくれぬか?」

そう言って、ギスリムは居並ぶ武将たちに向かって深々と頭を下げた。

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