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06-03.元特務隊長、戦争の終結を見る

木下ハジメは連隊全員に射撃の中止を命じた。

後詰として後方に待機していたトラホルンの槍兵部隊が、背中に食料を背負って最前線に上がってきたからである。


「バルゴサ軍に告ぐ! 竜王アガシャーはトラホルンの王子たちによって討ち取られたっ! もはやこれ以上の戦闘は無意味である!」

トラホルン軍の先頭に立つ数人が、バルゴサ語で繰り返した。

ハジメはバルゴサ語にそれほど堪能というわけではなかったが、おおよそ何を言っているかは聞き取ることができた。

「武器を捨てて投降せよ! こちらには食料の準備がある! 投降した者の命と、故郷への帰還を保証する!」


ハジメたち第5普通科連隊は多くの民兵を撃ち殺していたが、まだ数の上ではバルゴサ軍のほうが多いうえに地竜たちもいる。

アガシャーに忠誠を尽くして戦い抜く、という者が多ければ苦戦を強いられることになるだろう。


バルゴサ軍の中に動揺が走ったようだった。命令によって突撃してきていた民兵たちの足が止まった。指揮官が制止を命じたらしい。

後方から、立派な鎧兜を身に着けた武将が地竜に乗って前に出てきた。

「卑劣で臆病なトラホルン人め! イサに駐留しておわす竜王陛下を、いかにして亡きものにしたというのかっ! 偽計をくわだてるのもいい加減にせよっ!」

「討伐部隊がディール山脈を越えて北上し、バルゴサ軍を迂回してイサを目指したのだ! 疑うなら伝令をやって確認せよ!」

「ディール山脈を踏破しただとっ!?」

バルゴサの武将は驚いて叫んだ。

「……ことの真偽を確かめるまでは、ひとまず兵を止めよう。何かの計略であった場合にはただではおかぬ!」


トラホルン軍が上がってくる直前に、南方のカリザトからあがってきた第3普通科連隊が陣地交代を申し出てきたが、ハジメは伝令に事情を説明していったん待機させた。

アガシャー王崩御の知らせを確認した後、バルゴサ軍はどう動くのか? 投降するのか、それとも突進してくるのか。


この戦争は、アガシャー本人の主導のもとに計画されて実行されたものだとハジメは認識している。

いわば、アガシャーのワンマンとカリスマによって引き起こされた戦争だと言える。

本音を言えば、バルゴサの人民たちは戦争などしたくはないのではないか? とハジメは踏んでいた。


ハジメは半数ごとに前方警戒を残したまま、交代で食事をとるように隊員たちに命じた。

自分たちが作り出した屍の山を目の前にしてまともに食欲がわくものかどうかはわからなかったが。

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