1.俺はなぜ
1.俺は、なぜ
俺は冒険者ギルドを出たあと、特に行くアテもなかったため、街中のベンチに
座り考え事をしていた。
考えていたことは二つ。
一つは、俺はなぜ、役立たずと言われていたのか。
それはフィロメルナが言っていたように、俺がルーンフェンサーなのに攻撃を
せず、支援ばかりしていたからだろう。
別に、攻撃ができないわけではない。剣術も身につけているし、何より俺は、〈存在する全ての魔法・技を無詠唱で使用できる〉という、我ながらとんでもないチートスキルを持っている。本気を出せば、モンスターの大群を一人で殲滅させるくらいの力はあるだろう。
それでも攻撃をしなかったのは、ただ単に目立ちたくないからだった。
だから俺は、支援に回った。支援魔法なら、戦いに集中している奴らに付与しても、バレにくいと思ったからだ。
実際、少なくとも前衛のエッケハルトとダライアスにはバレていなかったで
あろう。後衛のフィロメルナとヨーシフについてはよく分かっていないが、多分
バレていない、と思う。
まぁ、唯一隣にいたエフェリナにはバレていたのだが。パーティー内ではエフェリナだけが、俺のチートスキルのことを知っている。スキルのことを知っている
とはいえ、俺のことを、「役立たず」と言わず、「凄い」と言ってくれたのは、
エフェリナだけだった。
以前エフェリナに、どうして目立つのが嫌なのかと聞かれたことがあったが、
俺はそれに上手く答えられなかった。何というか、「目立ちたくない」以上の理由がないのだ。
やはり、上手く表現できない。自分の語彙力に落胆する。
もう一つは、俺はなぜ、あんなにもあっさりとパーティーを出ていけたのか。
自分でも驚くくらいあっさりだったものだから、俺はよほどあいつらを仲間だと思っていなかったんだとしみじみ思った。エフェリナと離れるのには抵抗があったが、これ以上迷惑はかけられないと思えば、その抵抗心もなくなった。
今になって、パーティーを出たのを後悔してきた。否、エフェリナと離れたのを後悔している。彼女は、唯一俺のことを凄いと言ってくれた。
もっと一緒に、冒険をしたかった。
もっと一緒に、いたかった。
…こんなことを考えていても仕方がないと思い、俺は立ち上がった。そして、しばらくこれから何をしようか考えていたが、とりあえず素材集めでもしようと思い、近くの森に行くことにした。
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