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ヴァルハラ・シンドローム  作者: 織原 直
ヴァルキリー覚醒編
8/94

家族

 時間を確認すればすでに時刻は夕食時。 私が向こう側にいる間もきっちりこちらの時間が流れているわけね。 聞いてはいたけど少し損した気分だ。



「ななちゃん夕ご飯出来てるわよ、早く食べちゃいなさい」


母親の料理は冷めるとまずい、そうでなくても後片付けや鍋物の時の生存競争を勝ち抜くにはヴァルキリア云々よりも、まず夕食を食べなければならない。


 食い意地が張ってるって? 用意される食事の量と、家族の数と、私の食事の速さなどの影響でたいして食べるわけでもないのに、あっという間になくなるのよ。


 新しい情報が多すぎる。 ごちゃごちゃになった頭の中を整理していると、母が姿を現した。


 いい加減呼び出されてから、時間がたっているので、わざわざ呼びに来たのだろう。

 姿を見せたということは最終通告である。 今行かなければ夕飯にありつけない。


「わかりましたよ、はーい、今行きます」


 気持ちを切り替えリビングに降りていく。


 私の部屋は二階にあり、食卓へ行くために階段を下りる。 トントンとリズミカルな拍子をたて階段を下る。


 テーブルに腰を下ろす。 すでに食卓には家族が集まっており、いつも通りの夕食の光景だった。 父、母、姉、妹、私、これが我が家の家族構成だ。


 すでに各々が食事を開始している。 一般的な家庭風景とでもいうのだろうか、特に堅苦しくもなく平凡でなやりとりとゆったりとした時間の流れを感じる。


 こうも平凡な日々が続くと本当に先程までのことが夢のようだ。 が、現実逃避するわけにはいかない。


『まさか、忘れているわけではあるまいな、君はイグニスに命を狙われている。 あまり平々凡々と過ごしていると後で泣くことになるぞ』


『……はいはい、わかってますよ。 忘れるなっていうんでしょ?

 いわれなくても忘れたりしませんよ。 特に口うるさい精霊のことはね』


 とがった口調で反論する。 もちろん他の大勢がいる前で声を出すわけにはいかない。

 何とか念じる、思いよ届け、言語という縛りを超えて――


『ふむ、ならばよろしい、しばしの休憩だ。 食事でエネルギーを摂取することも戦士にも大事な仕事だ』


 念じたかいがあってか返答が来る。

 まったく、落ち着いて、食事ぐらいさせてほしいものである。


『アンタちょっと黙っててくれる。 人が食事を楽しんでいるときにごちゃごちゃとうるさいんだけど』


『そう言うことなら仕方がない、私も君に思念を送るのはやめよう』


 やっと黙った。 本当に口うるさい精霊だ。 これからはこの声とやりとりしていくのだとすると、少し頭が痛い。


「そういえば七瀬、あなた、さっきパソコンの電源入れ放しで、そのまま突っ伏して寝てたでしょう?


 ちょっとお行儀悪いんじゃないかしら、もういいかげん寒いんだから風邪引くわよ。 だいたいあなたは日頃の行いが悪いのよ。 おてんばなのは昔から変わらないんだから」


 ――と声をかけてきたのは、姉だ。 優等生タイプの性格でいつも口うるさい。


「うるさいなあ、ちょっと気が緩だけじゃない。 家の中でくらい、くつろいでもいいでしょ。


 その分外ではちゃんとしてるわよ、私だってもう高校生なのよ、放っておいてよ。

 いつまでも子供じゃないんだから」


 そこまでいうと、2人目の口うるさい刺客は口を閉ざした。

 これ以上言っても無駄だと思ったのか、私の言い分に納得したのかは不明である。


 母親は比較的おおらかに私を育てたから、多少わがままに育ち、反抗期もあり、態度が悪いというのが、姉の言い分だ。


 口うるさいったりゃありゃしない。

 そりゃあ、確かに私はおしとやかさなんてかけらもないけどさ。

 ちょっとは、落ち着いた性格に憧れなくもない。 清純派を気取ってみたくもあるのだ。


 「そうはいうけど、今朝ずっとパソコンの前で何かしてたでしょ? パソコンに夢中になるのが悪いとは言わないけど、もう少し他のことに目を向けないと将来引きこもり確定よ」


 2番目の刺客、姉が口を開く。 反論したことで藪蛇になってしまったのだろうか。

 どうやら、全然私の反論は効果をなさなかったらしい、しかもドアをはさんでいるのになんで私のしてたこと知ってるんだろう? この覗き魔め。と、うらめがましく、心の中で毒づく。


「その上、食事前はケータイでしゃべってたでしょう。 声が部屋の外まで漏れてるわよ。

 ホントアンタってインドアな性格してるわね」


「いいじゃない。 別に悪いことしてるわけじゃないでしょ、もう子供じゃないんだから、私の自由よ。 だいたい姉さんは私のことを子供扱いしすぎなの!」


 そういえば姉さんはCNTRYに事務員として務めているはずだ、ヴァーチャル・ソサイエティのことも知っていたりするんだろうか?


 姉が優良企業のCNTRYの入社が内定した時に、さんざん自慢していたのを覚えている。


 姉は文系で、入社一年目である。

 事務系の職場だと聞いた覚えがあった気がする。


 情報技術研究部等にでも就職していなければ、それはあり得ないと思う。

 問いただそうにもあまりにも非常識かつ非科学的、その上、妄想全開な話題になってしまう。


 あまり口に出したくないのよね。 だって真顔でそんなこと聞くなんて恥ずかしすぎる。

まあ、ヴァーチャル・ソサイエティの悪用を考えているのはCNTRYでも一部の人間に限られているらしいし、心配する必要はないと思うけど?


「お姉ちゃんはちょっとパソコン中毒だからね。 いつも訳の分からない基板?

 みたいなのいじってるし、私も見たよ。 まさかパソコンしながら寝てるなんて思わなかったけど」


 今度は妹からの追撃が展開される。 ただ、妹は割と御しやすい。


「……ケータイ中毒者の綾瀬にいわれたくない。

 いっつもケータイ開きながら眠ってる癖に。 私よりもなお悪いわ」


「あっ、あれは寝てるんじゃなくて考え事してたら、うとうと……

 じゃなくて情報整理を……」


 この少し生意気なのが妹の(あや)()である。

 ここだけの話だが相手によってかなり口調が変わる。

 その変わり身のすごさは少し怖いくらいだ。 嫌った相手にこれでもかってぐらい暴言を吐いたり、とにかくすごいの一言に尽きる。


 今時の娘らしくケータイが大好きで、暇さえあればケータイと四六時中と向き合っている。


 厳密にいえばスマホなのだけど、母親にはスマホとか言っても通じないのでケータイで通している。


 パソコン中心で、いまいちケータイを使用していない私とは対照的といえるだろう。


「どっちもどっちだけど、あまり入れ込みすぎないようしときなさいよ二人とも。


 特に最近はケータイ中毒の中高生が増えているらしいから、綾瀬は特に気をつけるように」


 お姉ちゃんが私達に釘をさす。 「は~い」

と、妹の綾瀬が適当な返事を返す、お説教に対してあまり応えているように見えないのはいつものことだ。


 どうせ実行しないのだから真面目な返事をするだけしらじらしい。

 私も適当に返答しつつ誤魔化す。


 私も人のことはいえないのだけどね。

 確かに普段から何かに没頭すると周りが見えなくなるタイプだってよく言われる。

 ゲームにはまり込んで中毒になってしまうことなどざらだ。


 少し注意しないといけないとは思っている。 あんまり自信ないんだけどね。


日常シーン、たまに入ります。

次の先頭まで若干中弛みするのかなあ? と思わなくもないけど、まあ、こういうのもいるので

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