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ヴァルハラ・シンドローム  作者: 織原 直
第三章・イグニスと妹
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ノームのヴァルキリー

視点変更するタイミングをミスちゃってます

 仮想都市はいつも通りの日常を回し続ける。

 それは美奈坂七瀬がいなくても変わらない。

 だっていうのに、こんなにも心細く感じるのはなぜなんだろう?


 私も、相当弱気になっているわね。 だからと言ってここで折れるわけにはいかない。 私はパーフェクト優等生瀬川理恵であり、最強格のヴァルキリーであるからだ。


 常に毅然であり、優雅に振る舞う。

 それが私の生き方だった。

 ならば誓おう、何があっても、私は絶対に折れないと……



 そんなことを考えていると、仮想空間の美奈坂家へとたどり着いた。 指定された場所はここのはずだが? 主のいない家屋が若干の寂しさとともに夕焼けに翳る。

 寂しさを感じさせるのは、気のせいだろうか?

 だが、同時になぜここにノームが? という疑問が?


 葵の指示に従い、監視対象であるノームを追跡すると、美奈坂七瀬の部屋で佇んでいる。 眼窩には虚空を映していた。 瞳には光がなく。 入ってきた私にも反応しない。


「ごきげんよう、ノーム。

 ここは、わたくしの友人の部屋でしてよ。 何の用がありまして?」


 刺激しないように、一礼する。 だが、それがよくなかったらしい?

 ノームの瞳に光が宿った次の瞬間には、彼女は武装していた。



ノーム視点。



 七瀬先輩が入院したと聞いて、急いで美奈坂邸へと来て見た。

 お姉さまは、確かにここに存在していた。


 仮想都市での最後の記憶はあいまいだった。

 血濡れのお姉さまを助けようとして私はシルフィードに切りかかったはず?

 助けなければと必死だった。 だが、次の瞬間振り返った相手は――

 だめだ。もはや相手の顔が見えない。


 もやがかかって思い出せないのだ。

 一体相手は誰だったのか? シルフィードだったはずだ!?


 ならばお姉さまを助けないと、リアルで実家を訪問するほどの度胸はない。

 それにお姉さまの昏睡の連絡が妹の綾瀬さんから入っている。


 なら、最後に見た血濡れのお姉さま辻褄があう、大丈夫だ。私は間違ってない。

 なら何をすべきか?

 

 まずは仮想で、行方不明である。

 お姉さまを探さないと、大丈夫。私はまだ狂っていない、正常な判断力がある!


「ごきげんよう、ノーム。

 ここは、わたくしの友人の部屋でしてよ。 何の用がありまして?」


 掛けられた声にふと我に返った。

 目の前にいるのは敵性ヴァルキリーのイグニスだった。


 彼女の正体は知らない。 だが、お姉さまライバルだった。

 シルフィードと共に敵だった相手だ。 今は彼女の相手をしている場合じゃない。


 だが、彼女の言葉の端、ここはわたくしの友人の部屋でしてよ?

 それを聞いた瞬間――頭が沸騰した。 お前などお姉さまの友達なはずがない!


 なぜならお姉さまはいつも孤高だった。 確かに高橋葵と懇意にしていたのを知ってはいる。 だが、それも表面上の関係に過ぎないと、お姉さま言っていた。


 なにより、私とお姉さまをつなぐのは一本の線である。

 普段ならば仮想都市で飲み反応する一本の赤い糸――ウンディーネを通したお姉さまとの契約、それが今は感じることができない!?

 なのに、なぜコイツ(イグニス)は堂々と友人顔できるというのか、お姉さまの反応がない今、私はどうすればいい?


 答えてウンディーネ!?


『ノーです、マスターからの指示はありません、マスターは瀕死の重傷であり、応答の力を残しておりません。


 残念ながら、私はは、あなたへの指示をマスターから言付かっていません……』

 そう、ウンディーネ、あなたも答えてはくれないのね



「イグニスさんでしたっけ? 美奈坂七瀬さん、のことを知りませんか?」


 他人行儀にふるまうのは私とお姉さまは二人だけの秘密の関係となっていたからだった。


 誰にも言わないように、リアルでは話しかけないように、他人の前だと七瀬と呼ぶな。

 もちろん、ウンディーネのことは黙秘するのは暗黙の了解であり、

 イグニスに悟られるわけにはいかない。 私はウンディーネの力を使えない。

 お姉さまのナイトとしての権利を有していない。


 これに関してはお姉さまと掛け合ったことがある。なぜ私ではないのか? 答えは簡単だった。


「あなたには必要ない能力だからよ、そして貴女は弱い。 私の騎士ではなく、友人として私に仕えてほしいと彼女は言った」


「この部屋の主は今は不在でしてよ。 それはあなたも知っているのではなくて? 

 ヴァルキリー・ノーム! 彼女は今は原因不明の昏睡、それ以上のことは申し上げられませんわ」


 それが返事だった。 図々しい……それが、私がイグニスに抱いた第一印象だった。

 容姿等は認識できても彼女と向き合うのはこれが初めてだった。


 ウンディーネのヴァルキリー七瀬は、常に一人でイグニスと対峙してきた。

 それはシルフィードが相手だとしても変わらない。

 何故か? 私に力が足りないからだ。


 シルフィードと一度手合わせして感じた。

 彼女達は強い。 手加減された。

 精霊の力を使わないシルフィード相手に私はほぼ完封された。

 お姉さまが傭兵風情のイナズマとかいう得体のしれない男を連れてきた時はショックだった。


 寝取られた気がした。 ナイトは私がなるはずだったのに!

 イグニスのナイトは正体が不明だ。 今も近くにいることだろう?


 ナイトは一見姿かたちは変わらないが、相手からすれば明確に容姿等が変わる。

 ヴァルキリーほどの変化ではないが、よく見知った相手ではないと、正体を看破するのは不可能だった。


 イグニスのナイトを私は知っているが、正体までは知らない。

 シルフィードのナイトは確か、坂崎とかいう人だと、お姉さまが言っていたのを思い出す。


 溜息をつく声が聞こえた。 それは、ウンディーネが発した言葉だ。

 ナイトではない私にも聞こえる。主従シスターとしての証。 それが、姉妹としてお姉さまが、唯一私に与えてくれたものだった。


『貴女のマスターなら、イグニスは敵だと判断するでしょう? ここはイグニスと戦闘するべきではないのですか?』


 無機質なウンディーネの声が聞こえる。 感情のない声には多少慇懃無礼を感じさせる。

 だが、彼女はお姉さまの従者として、常に適切にふるまっていた。

 ならばここは彼女の助言に従うべきだろう?


 イグニスを倒す! あのシルフィードよりも格上だとされる最強のヴァルキリー、それがお姉さまの語るイグニスだった。

 私に勝てるだろうか。いや勝たなければならない。 まずは彼女にシルフィードの居場所を吐かせる。


 そう、血濡れのお姉さまと対峙していたのはシルフィードだった!

 ならば彼女に合えば、お姉さまの居場所がわかるのではないだろうか?


『ウンディーネ、マスターは死んだの?』


『いいえ、昏睡状態です。 今はただ意識がない。

 まあ、詳細な事情は元マスターによって封じられていますし、私も自信の判断で動く命令権を与えられてはいませんが、ここはイグニスと戦うべきでしょう?

 なぜならあなたはシルフィード――その友人であるイグニスの敵なのだから……

 操り人形に過ぎない私には、真実を語る舌を持たない』


 ならば戦おう、例え勝算が1%に近くても、私は歩みを止めるわけにはいかない!




 ウンディーネは自嘲する。

 元マスターの命令等自分にはすでに関係がないことだった。

 ならばこの命令は何の強制力も持たない。 だったらなぜに自分はノームをイグニスにたきつけたのか?

 それは少しでも一緒にいた元マスターに、愛着を感じていたからにすぎないだろう? ほんのわずかな思い出の残骸、プログラム体に過ぎない自信にも人間らしい一面があったんだな。

 とウンディーネはわずかに自嘲した。

 新しいマスターが目を覚ませばこんな感傷もなくなるのだろうか?

 と元マスターだった幼い少女を夢想した。


今回は切りのいい場所まで問うかと考えてたら結構長くなりました。 まあサービスってことで、ちかいうちに、来年のなろうコン用に一策長編完結ものを書くつもりです。 プロットは大体できたんですが、ほかの更新が忙しくてなかなか手が回らない。

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