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ヴァルハラ・シンドローム  作者: 織原 直
ヴァルキリー覚醒編
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ヴァルキリーという存在

――アプリケーション・SYSTEM―ヴァルキュリア――


『このプログラムをインストールした者をヴァルキリーとか呼ぶ。 このプログラムをヴァルキリアと呼ぶ。


 基本的に一度ヴァルキリーになった者は、その権利を他の者に譲ることが不可能で解除するには、ヴァルキリーとして一度死ななければならない。

 

 そうすればプログラムヴァルキリアは、自動的にアンインストールされる。


 しかし、前に話にでてきたけど仮想都市での死はアカウント……つまり仮想世界での自分の消滅であって、現実に死ぬわけではない』


『たとえヴァルキリーとしての消滅したとしても、無意識かで仮想都市を構成する住人としてのアバターはのこり続ける。 この場合ヴァルキリー・シルフィードとしてではなく、美奈坂七瀬として、現実と同じく生存し続ける』


 詳しいことは不明だが、ヴァルキリーは現実世界の浸食を妨害するような鍵になり得るのだ。


 仮想都市による現実干渉を抑止するために、ヴァルキリアは創り出された。

 このSYSTEM・ヴァルキュリアを駆使し仮想都市への干渉を妨害するのが君に与えられた役割だ。


 例の黒服集団もCETRYの過激派が雇ったプロでヴァルキリーを捕まえたり、プロジェクトの妨害を防ぐのが目的としている。



 脅しではなく、もし捕まったりすれば研究対象としてすごく悲惨な目に遭うだろう』


 随分と、ぶっそうになってきたわね。 考えただけでも恐ろしいわ。

 

 でも、ヴァルキリー相手じゃいくらプロでも役不足って感じよね。 

 あの黒服全然強くなかったし……


「……で、現実世界に戻るのはどうしたらいいの? いい加減につかれてきたわ。

 この格好も何とかしたいし、アンタしゃべり方が堅苦しいから、肩こるのよね」


『とりあえずこの部屋まで戻り電子体との切断(ログアウト)を念じるのが、最も簡単な方法だ』


「なるほどね、念じれば。 なんか抽象的だけどやってみるわ」


 心の中で自身の接続をオフ、いいかえれば夢から覚めることを意識する。

 瞬間、身体がデジタル情報から、物理的実態へと移行するのを感じた。


 ――これがログアウト情報の波を漂う電子の波から自身を引き上げる感覚。

 表現するなら、夢からの覚醒というのが最も近いだろう。


「……んっ?」

 目を覚ますと見慣れたPCモニターの前で机に突っ伏していた。


 言うまでもなく実質の見慣れた光景がそこにある。 部屋の隅々まで観察してそれが意味のないことだと知る。 仮想都市であっても自室の光景は寸分違いもなく再現されているからだ。


 数多くのハードウェア――女子高生に似つかわしくない自室がそこにはあった。


 急いで鏡を確認すると、確かにいつも通り、かわいげのない顔、しかしどこか凛とした私の顔をしていた。 仮想世界で受けた火傷やすり傷も痕跡が一切ない。


 何か今までの出来事が全部夢じゃないの? とか思ってしまう。

 だって、仮想都市だとかそんな物の存在を確定させる証拠なんて何一つ見渡せる範囲にはない。


 実は今見ていたのは全部夢でした。 そういう落ちだったってあり得るのだ。


 だから確かめなければならない。 そのための方法はすでに夢の中で教えてもらった。

 ここですべて夢だって思い込むのも、一つの選択のような気もするんだけど……


 それをやると後々面倒な気がする。 典型的なダメヒロインみたいになりかねない。

 現実(リアル)世界(ワールド)に戻ってからの指示はすでにシルフ――シルフィードから受けている。


 リアル現実化した物が一つある。 仮想プログラムであるはずのSYSTEM・ヴァルキリア。


 プログラムにすぎなかったはずのそれが、確かに目の前にあるのだ。

 パッケージングされたゲームのような箱――確かにこんな者はなかった。


 だけども現実には存在する。 シルフ 『守護精霊(シルフィード)の略称』のいうことが本当ならば、ごく小規模な現実への干渉現象、もっと、男らしい名前をつけてあげようか、

だけども、今は危機的状況なので、棚上げにする。 名前、この場合はを気にしてはいられない。


 その箱の中に入っているのは携帯端末の形状をした、スマートフォンだ。

 を取り出し、内部を確認すると、確かにシステム・ヴァルキリアがインストールされていた。


 私が現実世界で使うものよりハイスペックな感じだし、これが証拠だとしても間違いはない。


 『おい応答しろ? 美奈坂七瀬、私の声が聞こえるか?』


 さっきまで仮想都市で聞いていた声が頭の中から響く、携帯端末のスピーカー越しに聞こえるわけじゃないところが不思議現象だ。


「うるさいわね、そんなに怒鳴らなくても聞こえているわよ」


『そうか良し指示どおりにしたな。 君が現実逃避しないか心配したぞ。

 すぐに今までのは夢でしたと結論づけられてはたまらないからな』


「あんた、私をそんな軽薄な女だと思ってるの? そりゃ、試すだけならただなんだし、少しぐらいは聞いてあげるわよ」


『どうかな、こういう状況になると一時的に現実逃避し、後で痛い目を見るのがお約束だがね』


「残念でした、私はそんな適当にできてないのよ。 こう見えて理知的なのよ」


『やれやれ、自分でそれをいうか、少しは慎ましやかさを覚えてはどうかね?』


「それこそ余計なお世話だっていってんの! それより続きはまだ?

 せっかく話を聞いてあげようっていうのに他人の人格批評してる場合じゃないんじゃないの?」


 この場合現実逃避という言い方に違和感を感じるのは、私だけじゃないはずだと思いたい。


 この付属のスマホにはバーチャルからリアル、双方向情報変換デバイスとして携帯を機能させるためのブラックボックステクノロジー(極秘技術)が使われているらしい。


 携帯越しではなく頭の中で声が響くというのは、非科学的ではなはだ不可解だと思うのだけど。


 シルフが言うには頭の中にヴァルキリアがインストールされてしまっていることの副産物だとか。


 まあ、それをいったら現実にヴァルキリアなんていうパッケージがあることのほうが不思議だけど。


 でも、一連の出来事は常識ではかれないようなことばかりなので、努めて考えないようにした方が賢明、いちいち突っ込みを入れていては私の方が疲れてしまうと思う。


 とりあえずあれが夢ではないということが証明されてしまった。


 時間を確認すればすでに時刻は夕食時。 私が向こう側にいる間もきっちりこちらの時間が流れているわけね。 聞いてはいたけど少し損した気分だ。

4000時目安で投下すると良いと聞いたので、もう一話いきます。

5月までに第1章部分を投下しておかないと、大賞応募できないというもんだいもあるんだけど、ペース的には間に合うのかな???

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