5
ギシ、とソファが嫌な音を立てた。
かと思うと桐島はなりやらソファの横を探る。
途端にソファの背もたれや肘置きがバタリと後ろに倒れた。
(ソファベッド!)
じんわりと滲む汗。
もうじんわりっていうレベルじゃない。
「え…っと…」
「暇を持て余していてな。穏和で優しい猫田小豆は様々なファンクラブを掛け持ちしているんだろう?」
「じゃあ不満はないな」と放心状態の俺に桐島は微笑みかける。
それは先程の生徒に向けたような優しい光り輝くような笑顔ではなく、一言で言えば悪人面だった。
(いやいやいやいやいやいや落ち着け、もちつけ、いや落ち着いてもちつけっていやいやいやいや違う違う!!)
猫田小豆。
四年前に転入してきて今までケツは綺麗なままである。
ついでにいうと自分の息子はちゃんと自分の右手で処理してきたお行儀のいい息子さんを持つ一般生徒だ。
もちろん哲平とカキッコもしてないし?やましい事はなぁんにもしていない。唇だって野郎となんかやっちゃいない。
もし絶対男に捧げなきゃならんっていうならバックバージンは哲平にって決めていた。
まぁ勝手に決めてただけなんだけど。
そして何故こんなダラダラと余計な事を考えているのかと問われれば、つまりの所小豆は現実逃避の真っ最中だった。
あれよあれよの内にきっちりととめていたボタンは外されているではないか。
その明らかに異常な事態に完全にショートしていた。
「ほう、見た目に似合わず随分派手なシャツだな」
「っ僕は純粋に尊敬しているだけでこんな事は「それに今日は眼鏡無しか?中々雰囲気が変わるものだな」
人の話全然聞かないよコイツ!!!
(気持ち悪くて眼鏡なんか忘れてたんだよもう何!ついてないとか言う次元じゃないじゃん、憑かれてんじゃん!!)
スルリとTシャツの中に滑りこんできた手。
長い指が脇腹を撫であげた。
「っ」
冷たい指に触れられ過敏に肌が泡立つ。
「柔らかいな…」
不思議そうに何度も撫であげられ俺は必死に声を殺した。
つーか柔らかいって。
皆してそこまで俺にデブ疑惑を浮上させたいのか。
「だが…まぁ悪くない」
壮絶な色香。渇いた唇を赤い舌がゆっくりと這う。
桐島は唇を舐め湿らせながら、ゆっくりと小豆に影を落としていった。
鎖骨にさらりとした髪が当たりこそばゆい。
「く、ぁ…」
―――ちゅ…。
首筋に吸い付かれて改めて心底思う。
(本当…ついてない…。)
ひくり、と喉が動いた。